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 ラブホテルにチェックインし、湯船に入ると癒されてゆく、一日の疲れ。岸本は極楽気分からため息をこぼす。
 そして少年たちも浴室に入ってくる──

 パチスロで大勝ちしたので、W指名してみた。

 折れそうなほど脆弱な肢体をしてリストカットの傷も目立つ祥衛と、成長期の少年らしく健康的な身体つきの大貴だ。
 祥衛は女性用水着のビキニパンツを穿いていて、ビビッドカラーの水玉模様が踊る。大貴はアンドリュークリスチャンの競泳水着。黒地に蛍光緑のラインが入っている。大貴のほうが生地面積は多い。
 恥ずかしそうに唇を噛んでいる祥衛とは相反し、大貴はじゃれるように笑いながら、祥衛の身体を抱きよせた。
 祥衛のほうがまわりの大人に無理やり趣味ではないものを着せられてばかりで、大貴はある程度なら自分の好みで下着やコスチュームを選べるらしい。恥ずかしがりかたの差異はそういうところからも来ているのかもしれない。
 早速、岸本は注文した。

「いい眺めだなぁ。そのままちょっと、いちゃついて」

 彼らは浴槽のなかで立ったまま絡みだす。お互いを慈しみあうようなキスだ。大貴は祥衛の身体を撫でまわし、腰を揺らして水着に包まれたペニスを擦りつけあいもした。
 敏感な祥衛はみるみるうちに半勃起となる。大貴はまだ反応していないが、平時から大きなサイズをしているので悩ましい。
 淫靡な密着をしばらく眺めさせてもらう岸本だった。

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 祥衛が勃起しきると、顔の角度を幾度も変えながらディープキスをしていた唇はやっと離れる。岸本は尋ねてみる。

「そうだ、大貴クン、祥衛クン」
「なに? 岸本サンっ」

 返事したのは大貴だ。

「今日はふたりとも、何人とエッチしてきたんだ?」

 興味本位の質問を投げかけながら、岸本は祥衛のビキニを引っぱってずらし、尻肉の谷間を見た。
 大貴は岸本の挙動を見て「ケツ突きだして」と、祥衛に指示をする。言われるがまま、祥衛は浴槽に手をついて思いきり突きだしてくれた。岸本の前に晒される肛門。入り口は赤く腫れて緩んでいる。

「4人……」

 うつむく祥衛の申告に、尻肉を撫でつつも、岸本は驚いてしまう。

「そんなに挿れられちゃったのか……! 今日だけで?!」
「ん…………」

 祥衛は羞恥の表情を隠したいのか、タイルの壁に額を押しつける。岸本は感嘆と呆れを抱いて祥衛の臀部に触れながらも、もう片方の手では大貴の競泳パンツを引っ張ってみた。
 大貴も腰を突きだしてくれたから、祥衛にしたのとおなじように、水着をずり下げて大貴の肛門もあらわにすれば壮観な光景だ。彼らの尻を両手それぞれで撫でさすっているだけでも、岸本は至福を覚えてしまった。

「大貴クンは、祥衛クンみたいなことはないだろ?」

 頻繁にアナルセックスを行わされていることは見てとれるが、祥衛ほどには傷んではいない。

「あたりまえじゃん。ムリ、一日にそんなするの! ぜってー病むー」
「でも、僕が今日最初のお客さんじゃないよなぁ」
「一発だけ種付けしてもらったよ」

 尻の谷間を指先でなぞってやれば、大貴は自分でも片手で尻肉を掴んでアピールしてくれる。
 祥衛にも触れると、祥衛からは押し殺したような吐息がこぼれた。

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 少年たちも湯船に浸かれば、大量にお湯が溢れる。
 岸本は縁に座り、代わる代わるにフェラチオをしてもらった。まるでソープランドにでも来たみたいに高揚する。ふたりで同時に舐めあげられると視覚的にも、刺激的にも、たまらなかった。

「あははは……、ヤスエー……、んー……、舌つかって」

 勃起しきった岸本のペニスを握ったまま、大貴は祥衛にキスをする。浴槽のなかでフェラをする合間にディープキスを見せてくれるなんてインパクトが強く、岸本はどきどきさせられっぱなしだ。

 濡れた彼らの姿も色気があっていい。早くも岸本は(W指名してよかった……)と感慨に浸ってしまう。節操のない岸本はキャバクラもフーゾクも好きで、オカマバーも楽しめるが、少年男娼との戯れもやっぱり好きだ。

 大貴は祥衛と舌を絡めながら、岸本を扱きつづけてくれた。
 やがて唇を離すと、祥衛に促す。

「ほら、岸本サンにもキスしてあげて」
「わ、わっ……、スゴイなぁ……!」

 身を乗りだした祥衛の薄い胸に揺れるニップルピアスに、岸本の視線は奪われ、興奮する。そんな祥衛とキスを楽しみながらも大貴に性器をマッサージされ、吸いつかれて、興奮は快楽と混ざりあってさらに高まっていく。

「なー、せっかくマットあるんだから、マットプレイしてあげたい!」

 祥衛の身体が離れ、岸本がひと息つくと、大貴も愛撫をゆるめる。
 バスルームの壁に立てかけてある銀色のエアーマット。大貴はずっと気になっていたらしい。岸本も気になってはいたが、そんな提案をされるとは思ってもみなかった。

「えっ! マットもできるの? 大貴クンは」
「得意じゃないけどー、いちおーできるよ」

 そこまで仕込まれているのかと、驚く岸本だ。

「ちいさいころ接待してたおじさんとあそんでたし、カッツンにも教えてもらったんだー」
「そうなんだ……じゃあ、秋山社長って克己クンにマットプレイしてもらってるのかなぁ」

 彼らの先輩男娼にあたる克己は、岸本の会社の社長と愛人関係を結んでいる。

「してもらってるんじゃね? エロー、ソープみてー!」
「ソープがどういうところか、大貴クン分かってるんだ?」
「おふろでイチャイチャするところ」
「まぁ、そんな感じかな……!」
 
 大貴は浴室から出て、ローションのボトルを手にすぐ戻ってくる。ラブホテルのものにしては大きめなマットを豪快に倒す大貴の動作は男らしくてちょっとかっこよかった。それから大貴はマットの縁に座り、洗面器にどろどろとローションを出して、シャワーのお湯と割ってかき混ぜる。

「いーよ、俺見てなくて。ふたりでフロ楽しんでろよ」

 祥衛と眺めていると、苦笑された。
 プレイに使うローションを作り終えた大貴は、マットの枕部分にタオルを敷く。

「よく知ってるなぁ」

 岸本は感心してしまう。大貴は洗面器のローションをマットに垂らして濡らしてから、自分の身体にも塗りつける。永久脱毛されてしまったなめらかな肌がとろつきぬめるさまは、また視覚的に岸本を煽りたてた。その身体で寝そべり、全身ですべることでもマットにぬめりを広げる。

「よーしっ。祥衛はー、そこで見学な」

 大貴は身を起こし、岸本をマットに迎え入れてくれる。
 膝をそろえて浴槽の縁に腰かける祥衛は無表情のまま、この空間を見つめていた。

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 うつぶせに寝転がった岸本にもローションが垂らされ、大貴の手で塗られる。

「熱くねぇ?」
「うん、ちょうどいいよ……」

 微笑む大貴に密着され、胸をすべらせたり、背中や脚に密着される。競泳水着の股間が擦れれば岸本はまたドキドキしてしまった。
 マットの上で屹立した男性器どうしを合わせるのは、女性に接客してもらう風俗店で味わえるものではなく岸本には新鮮だ。
 素肌の触れあいだけでなく、大貴の舌は首筋から全身を這う。
 身体の右側を舐めたあとはおなじように左側も舐めてくれて、すっかり脱力して油断していると脇腹を甘噛みされた。

「ひゃっ、大貴クン!」
「あはは……、なんだよ、その声」

 悲鳴を上げてビクつくと、大貴に笑われてしまう。
 身体の向きを逆に変え、またしばらくすべらせたあと、大貴は岸本の左腿を両足で挟みこむ。
 当たる大貴の股間はいつのまにか完全勃起していた。岸本も著しく勃起している。

 大貴はそのまま太腿に跨ってくれて、曲げた岸本の脚を胸に当てながら足指を一本一本しゃぶってくれる。指のあいだに舌を挿れられたりもする。そしてまた、軽くかかとを噛まれたりした。
 右足もおなじように奉仕してもらう。

「ふー……、でー、ソープって次はなにするんだっけ」
 
 しばらく考えたあと、大貴は岸本の身体の下にすべりこんできた。

「せ、正解だよ……!」

 カエルキックという技を披露してくれる。太腿で岸本のペニスを挟みこんで蠢く。

「んしょ、よいしょっ……、それで……、それでー、次はー、こうするんだったっけ!」

 続いて大貴は身を起こし、睾丸やペニスを弄りまわす。たっぷりローションを使っていたぶられるのはとても気持ちがいい。舌でアナルに触れられると、岸本は大きくビクビクッと震えてしまった。

「大貴クン、そ、そんなにされると……イキそうになっちゃう……んだけど……!」
「えー! たしかー、これから69して俺に挿れるんじゃねーのっ?」
「せ、せ、正解!!」

 しかし、岸本の身がもたない。快感はかなり高まってきている。
 どこが「得意じゃない」んだと思った。
 基本的な舐めかたや触りかた、身体の使いかたが上手いせいだろうか。大貴が本気でマットを覚えたらいったいどうなってしまうのか、恐ろしい……。

「でも、で、も、だ、大貴クンが上手いから、もうだめだぁ……」
「じゃあ、とりあえず、いっかいイク?」
「うん……! あっ、あ、あぁ、気持ちいいよ……!」

 尻孔に大貴の舌を感じつつ、扱かれて射精してしまう。出したものは少年男娼の作法通り、一滴残らず舐めとられた。

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「祥衛クンも、大貴クンに気持よくしてもらったら?」

 付着したローションをシャワーで洗い流しながら、岸本は縁に腰かけている祥衛を促す。
 一部始終を眺めていた祥衛の性器は勃起しきり、布地から完全にはみ出していた。表情はなかったが、頬も紅潮している。興奮しているのは明らかだ。

「いいの? 祥衛にもして。まだ時間だいじょうぶかな」
「ふたりのイチャイチャするところも見たいしさ」
「じゃあー、マットしながらー、岸本サンに掘ってもらう準備するね」

 それはさぞかし淫靡そうだ。岸本は湯船に戻る。

「来いよ、祥衛。……気をつけろよ、すべるから」

 祥衛は銀色のマットに赴いた。折れそうに細い足がたたまれ、座りこむ。すぐに大貴は祥衛に洗面器のローションを塗りつけ、軽くキスも交わしてみせる。

「なぁなぁ、岸本サンっ、祥衛もいまパイパンなんだぜ」
「えっ……わぁ、本当だ、どうしちゃったんだ?」

 岸本は、紐を解かれてビキニパンツを奪われた、あらわな祥衛の性器を見た。梳くように刈り取られてしまった祥衛は目にしたことがあったが、全くの無毛状態は初めて見る。屹立しきっている上にピアスまで貫通した男性器が無毛なのはどこか不釣合いで、それがまた岸本を惹きつけてやまない。

「お客さんに剃られたんだって。俺だけパイパンじゃないの、俺はちょっとうれしい!」
「祥衛クンはとっても恥ずかしそうだけどね……!」

 ぬめりにまみれた祥衛は、表情にも羞恥を表しだした。苦悶に寄せられる眉根。
 大貴も競泳水着を脱ぐ。元気に勃起したペニスが、弾かれるように全貌を現す。

 座ったまましばらくいちゃついたあと、祥衛が寝転がり、大貴がその上をすべったり舐めたりとマットプレイを行う。

 重点的に行われたのは性器の擦りつけあいだ。
 岸本の至近距離で、グリュグリュと触れあうローションに艶めくふたりの睾丸。
 岸本は思わず唾を飲んでしまった。
 いつのまにか、自分たちが気持ちよくなるということよりも、見ている大人に楽しんでもらう観賞用の性技に移行していることに、岸本はやっと気づく。

「あん、あっ、あんっ……!」

 大貴はわざとらしく、浴室に反響する大きなアエギ声──というより、もはやかけ声を発しながら擦っていく。恥ずかしいだろうにしっかり笑顔を維持して痴態を披露する様子から、大貴に施された調教の確かさがうかがえる。
 祥衛も、小さな声だったし、大貴とは裏腹に本心を表してしまって泣きそうな様子だが「あっ、あっ、あ……」と漏らす。

「あんっ、あん、あんっ、はぁんっ」
「あぁ……、あ……、あぁ、は……ッ……」

 合唱のように声をあわせて股間を擦り合わせ、息のあった羞恥芸を魅せつけてくれた。

 こんなとき、岸本の会社社長の秋山など少年を使った遊びに慣れた者がいたら、彼らの内心をさらに辛くする汚い野次や、逆に応援の声を飛ばしたりして場をさらに面白おかしくするが、岸本はただ興奮のまま注視していることしかできない。

 おたがいの肛門を舐めあったり、ローションにぬめる指を挿れあったりして、挿入されるための準備を本格的に披露されるころ──岸本の勃起はふたたび猛々しく盛り上がっている。

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 少年たちも軽く身体をシャワーで洗い、3人でベッドに赴いた。
 岸本は祥衛にキスし、ピアスの貫通した乳首をいじる。そんな岸本の内腿を舐めたり性器に舌を這わせる大貴の髪も撫で(あぁ……W指名してよかった……)と、しみじみと何度でも思う岸本だ。
 もちろん、祥衛も岸本のペニスに唇を這わせてくれる。

 さらにはふたりで同時に舌奉仕をしながら、それぞれ自分のアナルに2本指を挿れこみ、依然として岸本を受け入れる前準備を披露してくれた。大貴はチュクチュクと小気味いい水音を立てながら刺激を続け、祥衛はぎこちない指使いでスローペースに抜き差ししている。

 岸本ははちみつのようにローションをとろとろ彼らの尻にかけてやり、いよいよ準備を終えた。

「う、わ……、いやらしいなぁー……!!」

 布団と枕をまとめた一角にまず大貴が四つん這いになり、その上に祥衛が被さる。
 岸本に向けて、重ねて突きだされたふたつの尻。
 生粋の少年愛者ではない岸本でも、目がくらむ絶景だ。

「……こ、こんなことされたら、おじさんたちが参るのも分かるよ……」

 岸本は膝立ちで近づく。どちらの穴を先に使おうかと考えこむ。

「あぁ……迷うなぁ……!」
「両方ともー、岸本さんのオナホールだよっ」

 大貴は肛門を窄めたり拡げたりを繰り返して誘惑する。祥衛は耳の後ろまで真っ赤に染めていて、健気な哀れさがまた岸本の欲情を誘った。

「祥衛クンもヒクヒクさせてよ、見たいなぁ」

 痩せた尻を撫でて命じると、祥衛もまた大貴のように尻穴を蠢かせてくれる。

「うわぁー、ホント、すっごいなぁー!!」

 自分でやらせておいて感動する岸本だった。同時にふたつの肛門が窄まったり開いたりを繰りかえすのだから、たまらない。
 ……逡巡の末、まずは大貴のアナルから吟味することにする。

「あーっっッ、生のチンポきもちいぃ──……!」

 一気に根本まで挿れてやると、鮮やかな咽び声が上がった。

「俺のケツでぇ、いっぱい性処理して……っ」
「うん、させてもらうよっ!!」

 締めつけてくる後孔の感触に酔いしれ、しばらく激しく腰を使ったあと、大貴から抜き取って今度は祥衛にブチこむ。

「ほら、次は、祥衛クンだ!」

 今夜4人も相手をしているわりには、祥衛も締まりのある孔をしている。

「……ン、ひゃ……ぁ……、あ……、ぁああ……!!」
「祥衛クンのも具合がイイなぁ、とってもイイよ」
「ぁああ……ァ……!」

 腰骨を掴んで抜き差ししてやる。祥衛は大貴にしがみつき、恥ずかしそうに悶えている。

「あははは、ヤスエ、スゲー勃起してる」

 祥衛の感触を背中に感じているのだろう、大貴は笑っていた。
 岸本は祥衛から抜き、大貴に挿れ、また祥衛に挿れてを繰り返し、快感を昂ぶらせていく。

「つ、次はどっちに挿れようかな?」
「俺ー! 俺につっこんで、チンポほしいっ」

 待ちかねるように自分でアナルをいじりだす大貴だ。入り口を撫でたり、つついて嬲る。

「ははは、可愛いなぁ……」

 大貴がユサユサ腰を揺らすと、上に乗っている祥衛の身体も否応なく揺れる。愛らしい求愛の動作に微笑んだ岸本は、祥衛の尻も大貴の尻も撫でてやった。

「ヤスエもー、ちゃんとゆわなきゃ、挿れてもらえねーぜっ」
「……ほ……、ほしい…………、……いれてほし、い」

 蚊の鳴くような声だ。

「ようし、じゃあ、祥衛クンだ!」
「……ッひ……うぅう──……!」

 岸本の一突きに、祥衛から上がる悲鳴とも嬌声ともつかない声。
 岸本は祥衛を掘り進め、絶頂へと導かれていく。

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 スマートフォンの画面いっぱいに、さきほど撮ったばかりの写真を表示して眺めている。
 重なったふたつの尻肉、下にある大貴のアナルからは岸本の精液が溢れだしていた。
 上にある祥衛の臀部には今日の日付をサインペンで記した。

 いい記念写真だ。

 岸本の会社社長の秋山も、遊んだ少年の陰部を記念と称してよく撮っており、内心そのシュミを侮蔑していたのだが、ついに自分もその領域に足を踏み入れてしまった──

『性奴隷の成長記録は、毎回撮って後にまとめて見返すとなぁ、感慨深いものもあるぞ!』

 秋山の言葉を理解できるレベルにはなりたくない……と思いながら、岸本はスマホをしまった。
 男性用トイレを出ると、にぎやかな色彩と大音量のシャワーを浴びる。さまざまなゲーム筐体(きょうたい)の音が混ざりあって耳に痛い。

 彼らの姿を探して歩きまわると、UFOキャッチャーのエリアにいた。大貴がレバーを操作しており、祥衛はそれを眺めている。

 パーカーにクラッシュデニムを腰履きしている大貴と、綿ジャケットにカットソー、細身のデニムを穿いた祥衛。彼らの姿はとても少年男娼には見えない。大貴の肩に下げられている大ぶりなトートバッグに性的な仕事で使う小道具も詰まっているとは、だれも考えないだろう。

 岸本はまず祥衛と目があい、無言の数秒を過ごす。それから大貴にも気づかれた。

「あー、岸本サン、なにやってんだよ、おっそかったじゃん」
「ちょっとね……」
「ハラでもいてーの?」
「いや……シゴトの電話がかかってきてさ」

 嘘をついた。とても、先程の写真に見とれていたなんて言えない。
 祥衛は黙っていたし、大貴にも「そうなんだー」と言われただけで、詮索されなかったのでホッとする岸本だった。

「これ、取ったの?」

 操作台に置かれたキャラクターフィギュアを、岸本は手にする。

「うん。岸本さんがトイレいってるあいだに。エースすきなんだー」

 大貴はニコッと笑って岸本を見てくれた。
 痴態もいいが、やっぱり子どもらしい姿のほうが似合う。

「なぁなぁ、デニーズ行こっ。ハラへったー」

 まだ機械は動いているのに、大貴は岸本に寄りかかってくる。戦利品のフィギュアは大貴の手に掴み取られた。

「いいの、もうゲームは。まだほしいものがあるんじゃ……」
「ほんとはローもほしいけどー、3回やってもとれねーもん。今日はエース取れたからいい!」

 ボタンの横に置かれた何枚かの小銭は祥衛が回収し、大貴に押しつける。

「祥衛にやるよっ。いいって。ちょ、ごういん!」

 大貴が受け取らないので、祥衛は大貴のデニムの後ろポケットに小銭を突っこんでいた。

 ゲームセンターを出て駅方面に歩きだす。終電の時刻が近いため、群れをなす多くの人々が急いでいる。

「ヤスエさー、まだムラムラしてるみたいだよ」

 ファミレスへの道すがら、悪戯っぽく笑って大貴が教えてくれた。

 実は岸本だけが達し、少年たちは射精していない。大貴はゲーセンに行きたいと急かすし、岸本も満足しきっていた。予定時間を過ぎてしまっていたのも事実だ。それでも射精したらと勧めた岸本に、大貴が「仕事なのに、甘やかしたらだめ!」と厳しいのだ。

 横断歩道を渡りながら、祥衛は頬をすこし染めて大貴の背中を叩く。女の子のような挙動だ。
 大貴は笑いながら逃げていて、彼らの姿は微笑ましい。
 岸本も笑っていた。二階にある店の出入り口に、駆けあがっていく少年たちを眺めながら。

E N D