Glitter Night

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「つっちぃ」というのは大貴がつけたあだ名だ。
正式(芸)名はマルガリータ土屋という。

祥衛は21時に駅前へ来るように言われていて、その通りに待ち合わせ場所へ来て待っていた。
すると、真っ赤な車が走って来る。
つっちぃの車だ。

「ごきげんよう〜! 久し振りね祥衛ちゃん! キャー、やっぱりかわいぃわぁ!」

停まった車の窓が開き、顔を出したつっちぃがオカマ言葉で祥衛に声を掛ける。
長い付け睫毛やラメのアイシャドーで飾られ、バービー人形よりバチバチの目。
まるで顔の3分の1が瞳のようだ。
特徴的なのは目だけではない。
ウィッグを被りプラチナ色のマッシュルームヘアー。
着ている服は蛍光色のワンピース。
ド派手過ぎる。
『インパクト』という単語を具現化したような外見だ。

祥衛は若干ヒキつつも――
助手席に大貴が座っているので後部座席へ座った。

「やめろって、祥衛がびびってるだろ!」

「ビビってないわよねぇ〜! アタシが美しすぎるから、固まっちゃってるのよねッ、やすぴょーん」

「ちげぇよ! もー、つっちぃ運転に専念しろ」

「アンタ客扱いが悪いわねー、で・も・っ。そんなSな大貴ちゃんが好き☆」

「ハイハイ、俺もスキだから運転」

動き出す車内、ミラー越しにつっちぃに見つめられ、祥衛は目を景色にそらした。
大貴は時々つっちぃと寝ているらしいが、良く出来るなと祥衛は思う。
男なのか女なのかそもそも人間なのか?(←失礼)分からない存在と。

「好きって大貴ちゃ〜ん、それLikeでしょ? いいわ、分かってる。大貴ちゃんは薫子ちゃんのモノだもの……土屋、身を引きマース!」

「つっちぃも彼氏いるじゃん!」

「倦怠期ヨ。アンタんとこはどぉなの?」

「えー、べつにふつう〜」

「普通が一番よ、普通が。やすぴょんとこは?」

話しを振られて困る祥衛。
何て返したらいいのか分からない。
大貴が笑いながら振り向いた。

「祥衛はラブラブだよなー?」

「あっらー、やるわねー、イマドキの中学生って! 昔はね、手も繋げなかったのよ、中学生同士のカップルって」

「今は小学生でも付き合ったりするんだぜ、つっちぃ」

「信じらんないわよ、マセてんのよねー今の子」

「あははは、おばさん♪」

「ま! 大貴ぃあとで見てなさいよ〜〜〜飲ませてべろんべろんにして、額に肉って書いてやるわッ!」

にぎやかな会話が繰り広げられる車内には、大音量のトランスも鳴り響く。
暇だからつい来てしまったが、祥衛は少しだけ後悔した。

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「ちょっとちょっと、そいえば聞いたわよー、ヤスくん家に入れなくなっちゃったんだって?!」

居酒屋のVIPルームで、つっちぃは煙草を吹かしていた。
テーブルに並ぶ料理を食べまくっている大貴の隣、祥衛は頷く。

「それで大貴ちゃん家行ったら、薫子ちゃんにロリィタ着せられたそうじゃない!」

「あーっ、まじうめぇ。祥衛、レバ刺うめーから食えよ!」

レバーはあまり好きじゃない祥衛。
首を横に振ると、今度は生春巻の皿を差し出された。

「じゃあ春巻食ってみろって、美味いから。つっちー、ごはんおかわりしていぃ?」

「いぃわよ〜。いっぱい食べて大きくなんなさぁい」

つっちぃは煙を吐き出すと、灰皿に煙草を押し付けて呼び鈴を鳴らす。
駆け付ける従業員。
大貴はメニューを見ながら次々に注文していった。

「はい、ご注文でしょうか」

「えーっとっ。串盛りと、サイコロステーキと、ポテトフライ。ネギトロ巻。チーズオムレツ。パンナコッタとバニラアイス。シーザーサラダ。あ、ユッケもう一個!」

「アタシはビール。よろしくねっ」

「かしこまりました」

(まだ食べるのか、まだ飲むのか……)

呆れる祥衛。
祥衛は生春巻を箸で分解してちびちび口に入れていた。
確かに美味しい。
特に海老の具が美味しい。

「なんか、俺ばっか食ってるじゃん……祥衛も食えよ!」

大貴は酒も飲んでいるため、実は結構酔っている。
祥衛の肩に腕を回し、唐揚げを掴んで口に押し付けてきた。

「やめろ。大貴……」

「肉食えって、いっつも言ってるだろ」

「いらない」

「つっちぃも言ってやれよぉ、ヤスエに肉食えって〜」

つっちいは聞いていない。
バッグからケータイを取り出すのに夢中で聞いていない。

「良いわ良いわぁ、もっと絡みなさぁい!」

ケータイのカメラをスタンバイすると、祥衛と大貴を撮影しだす。
フラッシュが光る薄暗い個室。
ビールを持ってきた店員は不思議そうに見ていたが、すぐにいなくなった。

「絡んでほしー? じゃあ俺をいっぱぃ買ってくれるー?」

「買う! 買うわぁーステキー! もっと密着して、そうそう、あぁリアルBL!」

「やったぁまいどありーだ。祥衛、まいどありだぜー! あっはははっ!」

大貴に抱きつかれて、つっちぃに撮られながら祥衛は生春巻をもぐもぐ食べ続けていた。
頬にキスされながらあっはははじゃねえよと思い眉間に皺が寄る。
そんな祥衛は水と間違えて大貴の柚子小町を飲んでしまう。

「うわ! おまえそれ俺の、ゆずこま……」

大貴が気付いた頃にはもう、遅い。

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「あ、あの、お客様」

新入りバイトの女は、ふらふらと廊下を歩いている男性客に声を掛けた。

「大丈夫ですか」

「……っ、だれだ……?」

間近で見つめられ、店員はドキッとしてしまう。
男性客はとてつもない美少年だったのである。

「するの?……オレと……」

「えっ、えっ、お客様」

「タダで……させてやるから……」

手を掴まれて、戸惑う店員。
するとそこに一人の客が割り込んできた。

「バカ!ヤスエ!お前こんなとこに居たのかよ」

「あ……だいき……」

どうやら男性客の連れのようだ。
スイマセン!と謝って、彼はふらつく連れを奥のVIP席へ連れてゆく。

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「ったく、勝手にどっか行きやがって」

「ぬぎたい。服……」

「脱ぐな!こんなトコで!」

シャツをめくりあげる祥衛を抑えて引きずり、なんとか部屋に戻って来た大貴。
すると、つっちいは急いで帰り仕度をしていた。

「たぁいへん!マーブルちゃんが風邪ひいちゃったってダァリンから電話あったのー」

「マ、マーブルっ……?」

「アタシの息子〜!5才・雑種よ。さっ今日はお開き、帰るわヨ!」

部屋を出ていくつっちい。
シャツを脱いで床に転がっている祥衛。
大貴は溜息を吐きながら額を押さえた。
なんだが頭痛がしてくる……

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「待てよ祥衛、待てったら!」

せっかくつっちいがFAMILYのビルまで送ってくれると言っていたのに、祥衛は店を出た途端、勝手に夜の繁華街の中を歩いていってしまう。
大貴はつっちいの申し出を断り、祥衛を追いかけるはめになった。

「ちょっと君、ホストとか興味ない?」

大貴の視界の先で、祥衛はホストの勧誘に引っ掛かっている。
髪型や服装、夜で暗いせいもあり中学生にはまず思われないらしい。

「ほすと……?」

「君ならイイ線行くんじゃないかな」

「キョーミないっす、行くぞ祥衛!」

無理矢理に祥衛の腕を掴んで、大貴は早足で歩く。
待って〜、と勧誘のホストは声を上げていた。

「ダメだって、知らない人についてったら」

「やりたい。やりたいんだ。男でも、女でも、ほすとでもイィ……」

「ダメ!」

大貴に引きずられながら、けち、と呟く祥衛。
顔は全く赤くなっていないため、外見からは酔っていることがわからない。
かえって厄介だ。

「あぁ……したい……出したい……」

「ガマンしろよ!家まで……」

「大貴の家……やだ……かおるこさんとだぃきがエッチして……でも俺は……する相手いない……」

「何ワケわかんねーこと言ってんだって!タクシー停まれ〜!」

大通りで手を挙げる大貴の前に、走って来たタクシーが停車する。
開いたドアの中に祥衛を押し込み、大貴も乗り込んだ。

「何処まで行かれます?」

「えっと、大通りを左に曲がっ…」

説明しようとする大貴の膝の上に倒れ込みながら、祥衛は会話に割り込む。

「ラブホテル行く。ラブっていうなまえのラブホテル。すきだ、ラブの503号室……」

「あぁ、川沿いにあるLOVEですね。わかりましたー」

発車する車。
大貴はなんだかどうでもよくなってきた……

「ラブ、ラブ、だぃきとラブ♪」

そんな歌を歌いながらケタケタ笑い出す祥衛は、完全に壊れている−−−

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「ちょっ、ヤスエ……!」

エレベーターの中で祥衛は大貴に抱き着いて、キスをしてくる。
引き剥がそうとしても駄目で、大貴の頬は祥衛の涎まみれになった。

確かに柚子小町はロックだったけれど、それをたった一杯飲んだだけで何故こうなるのかが分からない。
大貴は実家にいるときから、父親のブランデーやシャンパンを時々飲んでいる。
そんな大貴からすれば祥衛の酒の弱さは信じられないし、酔っ払った時の変貌ぶりは手に負えない。

「いい加減にしろよ! もー、ほら着いた」

「だぃき……あぁ……503だ……」

よろける祥衛の腕を引きつつ、大貴は口許を拭って歩く。
気に入っているらしい503号室に着くと、祥衛は嬉しそうにベッドへ倒れた。
そして、シャツを脱いでしまう。

「部屋入って、即やんのかよ」

「だって……したい……」

祥衛はベルトを外し、ジーンズも脱ぎ捨てた。
パンツ一枚で、広いベッドに横たわっている。

「大貴とかぉるこさんは、今日の朝してた……それなのに俺だけ。俺だけしてない……」

「お、お前知ってたの……?!」

ケータイをテーブルに置いていた大貴は、驚いて振り返り、ベッドの祥衛を見た。

「……まじで?」

「うらやましい。……俺も、したい……」

「うそだろ!」

「風呂でしてた」

大貴は恥ずかしくなった。
てっきり、祥衛は寝ていると思っていたのに――

「すっ、するつもりじゃなかったんだぜ! なんか二人で入ってたら、そんな感じになってきて」

何故だか凄く焦ってしまった大貴は、ベッドに座り弁解する。

「やらしい。朝から。毎日やってるんだ」

「やってねぇ! 今日だって一週間ぶりくらいだったし……」

「俺は、シホにも会えないし、今はれー君もいないのに。仕事もないのに。大貴は客とも、かおるこさんとも、せっくすざんまい」

「だからっ、そんなしてねぇってゆってるだろ」

「うるさい」

寝返りを打った祥衛は、大貴の手首を掴む。

「いいからはやく、やれ」

「…………」

(命令口調かよ)と大貴は思った。
肩を竦めると、服を脱ぐ。
祥衛と同じく下着だけになると、肌をすり寄せる。
腕を回して口づけを与え、祥衛の舌と自分の舌を絡めた。

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「……っ、だぃき……」

しばらくキスをしてから唇を離すと、早くも祥衛はとろん、と快楽に痺れた表情をしている。
大貴はベッドサイドのスイッチで明かりを薄暗くすると、そんな祥衛の唇をなぞった。

「そんなに俺としてーのかよ……」

「ん、したい……大貴が、すきだ……」

大貴は微笑みを返すと、口の中に指を入れて、軽く掻き回す。
唾液を混ぜて、もてあそぶ。
舌を摘んでからゆっくりとその指を離して、祥衛の唾液を舐めた。

「美味しい。祥衛の唾……」

わざとらしくそう言ってやると祥衛は恥ずかしそうな顔をする。
祥衛のそんな顔を見るのは、大貴には愉しい。
そっと首筋にキスをして舐め回して鎖骨を辿り、胸元へと降りてゆく。

「あぁあっ……!」

胸の突起を舐めると、祥衛は大きく悶えた。
大貴は甘噛みしたり指先で弄ったり、巧みに祥衛に刺激を与える。

「ヤスエは乳首いじられんの大好きだよな?」

「んぅ、すき……」

「まじでヤラシイ身体。変態」

祥衛も、大貴に言葉で責められることに悦びを感じてしまう。
マゾの祥衛とエスの大貴。
大貴は口の端を歪めながら、祥衛の股間に手を伸ばす。
すでに、ソコは膨らんで張り詰めていた。

「何コレ。もう、すげー感じてんじゃん」

「う……」

「舐めてほしい?」

トランクスの上からカタチを掴まれて、祥衛はたまらず吐息を吐き出す。
焦らすように触られると、もどかしくて腰を揺らした。

「舐めて……ほしぃ」

「ヤスエの淫乱なチンポ舐めて下さいって言え」

「ヤスエの、いんらんなチンポ、舐めて……ください……」

「ふはははっ。ホントに言った。じゃあー、次は大貴サマ舐めて下さいって言え」

「だぃきさまなめて……ください」

早くして欲しくて、懇願するような目で言う祥衛。
それに対して大貴はけらけら笑っている。
笑いながら祥衛のパンツを脱がすと、弾かれるように出て来た性器を大貴はじかに掴んだ。

「二分でイカしてやるよ」

ぎらつく大貴の瞳に、祥衛の背筋はゾクリとする。
そして、そんな威圧感のある瞳でペニスをくわえられると、余計に興奮する。
大貴の口の中に包まれた性器は吸われて、舌で舐め上げられて、祥衛の股間はどんどん熱くなってゆく。

「あっ、あぁ、んぅ、あぁっ……!」

大貴のフェラチオは上手すぎる。
どうしたらこんなに上手くなれるのか、祥衛にはわからない。
魔法のように心地良さが溢れ、先走りと唾液が蜜となって混ざりゆく。
口での愛撫に加え指も使われると、もう駄目だ。
祥衛は瞼をぎゅっと閉じて、射精した――

「ああぁっイクうぅううう……!」

祥衛にとって、二日ぶりの絶頂。
あっけなく達してしまい、はぁはぁ息を乱して身体を投げ出す。
舌で白濁を受け止めた大貴は、そんな祥衛の顔を両手で掴んだ。
キスをして口移しで精液を流し込むと、顔を離して不敵に微笑む。

「お前が飲めよ。お前が出したせーしなんだから」

祥衛は飲み込まざるを得なくなる。
自分のものとはいえ、生臭い味に眉根が寄った。
あまり、精液を飲むのは好きじゃない。

「二分かかんなかったんじゃねえの? ソウロウじゃん」

「違……」

大貴が上手いし、怜が旅行に行ってから射精してないからだと、祥衛は反論したかった。
しかし、喋るのがめんどくさい。
だらりと倒れ込んでいる祥衛の横で、大貴も下着を脱いだ。

「俺のもくわえてよ。祥衛の口で勃たせて」

命令され、脚を開いて座っている大貴の股間へ、祥衛は身体を滑り込ませる。
完全に勃起しておらず、軽く膨らんでいるだけのペニスを、祥衛は口に含んだ。

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起たせた肉杭の上に、祥衛は後孔を合わせて体重を沈ませる。
騎乗位。
大貴のペニスをすべて体内に飲み込むと、それだけでもう祥衛はタマラナイといった表情をして、感じた吐息を零している。

「自分で腰動かしてみろよ」

「ん、ぅ……」

大貴は何もせず、頭の下で手を組んで横たわっているだけ。
仕方なく、祥衛はひとりで腰を揺さぶりはじめる。

「おっ、いいじゃん。そうそう……」

「はっ、あぁ、あ、あー……!」

「もうちょっとココ使えよ。ほら」

組んでいた両手を解いて、大貴は祥衛の腰を掴んだ。
ちょうど骨盤の位置だ。

「くねらせて」

「はぁ、はぁ、あ」

大貴の言う通りにすると、途端に、祥衛を貫く快楽がじんわりと増える。
まだ、自分の腰使いは完成されていないのだと祥衛は思った。

(でも、どれだけがんばっても……大貴程にはなれない……って…おも…う)

「身体全体を動かすんじゃなくて……腰をもっと使うってかんじ。前もゆっただろ?」

「ん……」

「こうゆう風」

大貴が腰を大きく揺らした。

「!!」

突き上げる快感に祥衛は息をのむ。

「合わせて。俺の腰づかいと、自分の腰づかい」

「……」

“お互いの腰の動きを合わせれば、更に快楽は高まる”
それは、今までにも大貴や怜に言われたり、体験したりして祥衛は知っていた。
しかし、実際犯されているときはあまり出来ていないときも多い。
貫かれていると気持ち良すぎてただ翻弄されるだけになって、何も出来なくなってしまうのだ。

「ひ、あぁ、だ……ぃき、あッ」

「もー、ダメダメじゃん」

「きもち……良、すぎて…、あぁあっ」

「俺に犯られんの、そんなにイイ?」

揺らされながら問いかけられて、祥衛は首をガクガクと何度も振った。
それを見て大貴は微笑う。

「ふふっ、そーなんだ…」

「大、貴……!」

祥衛はシーツに手をついて、身体を弓なりにのけ反らせた。
リスカの後が幾重にも重なり合った手首は小刻みに震えている。
細い胸板には汗がじんわり、滲んでいた。

「あぁ、あッ、は、あぁああああ!」

下から突かれてヨガル祥衛のペニスは張りつめて、透明な蜜を零し滴らせている。
大貴は腰を振りながら、そのはち切れんばかりの祥衛の性器を握った。

「やらし過ぎ。こんなにドロドロ出てるぜ」

「あ、ぁ、あ……」

後孔にも刺激を受けているのに、性器までいじられたら
祥衛はもうどうしようもなくなってしまう。
ただ、ふるふると震えて表情を歪ませるのみ。

「出ちゃ……」

強く握られて扱かれれば、そう時間のかからないうちに達してしまうことは明らか。

「出せよ。次は俺が飲んでやるよ」

「う……」

「祥衛のせいし、美味ぇからスキ」

腰の動きを止め、大貴は両手で祥衛の股間を弄くった。
大貴に本気でいじられれば即座に祥衛の快感は頂点まで引き出され、快感の極みがせり上がってくる。

「あぁ、あっ、は、はぁ、あ、はぁ、はぁ、ハァ、あ……!」

「イキそう?なぁ、もう出すの?」

悪戯っぽく笑った大貴は体勢をくるりと変えて、性器の結合を解いた。
祥衛の性器のそばへ顔を持ってくる。
舌先でペニスの根本をつつかれたら、祥衛はもう駄目だ――

「あぁああああッ!」

瞬間、目を固く閉じ、祥衛は精を放った。
亀頭を大貴に銜えられて、強い力で吸い取られる。
祥衛の出した白濁液を口に含み、大貴はペニスから顔を離す。
その瞳は妖しい光を孕んでいて、祥衛はぞくぞくした。
大貴は口許についた精液を指で拭いながら、
ゴ ク リ、
ゆっくりと喉を動かす。
そんな大貴の動作は官能的で色気に満ちていた。

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激しい快楽に飲み込まれ、祥衛はまどろんでいたらしい。
気が付いて瞳を開けると、部屋は暗く、TVだけがついていた。
大貴はソファにだらりと座り、リモコンでチャンネルを変えながら電話している。
上半身裸で、ズボンは履いているものの前のボタンもチャックも全開で、覗いている下着。

「うん、うん……あははっ。そうなんだ……」

大貴の電話の相手は大抵いつも客。
祥衛は寝返りを打った。
素肌に感じる布団の温もり、肌触り。
服を着たい、と思ったが身体を動かすのが面倒臭い。
大貴の声をぼんやりと聴いている。
祥衛に遠慮してか、TVの音はかなり小さい。

「おやすみ。仕事頑張ってね……」

電話を切ったあと溜息を零したのが、祥衛に届く。
祥衛は何だか、酔いが醒めたこともあり、大貴に迷惑をかけたような気がしてきた。
もぞもぞ再び寝返りを打って、大貴の方を向く。

「…………」

大貴はまだ、祥衛が起きていることに気付いていない。
ソファに寝転がってケータイをいじっている。

「……大貴」

「あっ、俺、起こしちまった」

布団から顔だけ出して名前を呼ぶと、大貴は祥衛の方を向いた。

「ゴメン。電話うるさかったよな」

「……うるさく、ない……」

祥衛は首を横に振る。

「ヤスエ大丈夫。 酔いさめた?」

ソファから離れ、ベッドまで歩いてきた大貴を祥衛はじっと見上げた。
心配そうな大貴の表情が、洋画を映すTVの灯りに浮かび上がる。

「……ああ」

「何か飲む? ポカリとかあるぜ、冷蔵庫に」

「飲む」

祥衛が身体を起こしていると、大貴が部屋の冷蔵庫からポカリスウェットを取りに行ってくれた。
枕の上に座った祥衛に手渡される、500mlのペットボトル。

「ほいっ」

「……なんか」

「?」

「悪い……」

冷たいポカリスウェットを両手で握りしめて、祥衛の口から零れる言葉。

「家に泊めてもらったり、酔って、迷惑かけたり」

「はぁー? 全然かかってねえって。気にすんなよ」

「…………」

祥衛の隣に腰を下ろした大貴は、そう言う。

「いや、でも……」

「だいじょうぶだって。早く飲みな」

大貴は優しい。キャップを開けながら、祥衛は思った。
そして、一口飲んで気付く、

(そういえば大貴、イってない。俺だけイって――)

仕事もこなしているし、朝もしているから、本当はする気分ではなかったのだ。
それなのに酔った勢いで、強引にしてもらった。
祥衛はしゅんとしてしまう。
外面上は冷めた無表情のままだったが、祥衛は目線を下に落とし、やや俯く。

「どーしたんだよ」

「…………」

「気にすんなって言ってんだろ〜」

大貴は苦笑しつつ、祥衛の頭をぐしゃぐしゃと撫でる。

「ほら、キスしよ」

顔を近づけられて、言うなりに祥衛は口づけした。
セックスのときに大貴がするような激しいディープキスではなく、唇に触れるだけの優しくて軽いキス。
口を離すと大貴は笑ってみせる。
その表情は、祥衛の好きな大貴の表情のひとつだ。

「どーする? 家、帰る? それか泊まってく……?」

「……どっちでもいい」

「薫子にメールしたら、薫子もスキにしたら良いって言ってた」

「……」

「じゃあ泊まろっか。一緒にフロ入ろーぜ」

祥衛は頷く。
友達という枠をあまりに越えすぎたつきあいではあるけれど。
大貴は大切な友達で、大切な存在なのだと再認識する。

怜が旅行に行った理由につづく