Agnus Dei

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「……大貴さま……、大貴さま」
 安楽な夢を見ているのに、揺り動かされる。眠りのなかで幸せなひとときを味わっているのに。
 もう現実では会うことの出来ない母親の舞花と、庭園に出したテーブルでお茶を楽しんでいた。舞花の好きなアールグレイティーを味わっている。
「起きて下さい、おぼっちゃま」
 優しくて暖かい風に撫でられ、鮮やかな初夏の緑と、薔薇たちが微笑む。舞花と話をしていたら、薫子もやってきた。今日も黒いドレスがよく似合っている。
 薫子はとても綺麗だ。もちろん、舞花も美人なのだけれど、どうしても大貴は薫子のほうにみとれてしまう。
 薫子の麗しさの前では、幾千の薔薇さえもかすむ。
「大貴さま、起きてくださいませ」
「……う……」
 意識は現実に還った。
 瞼を開けると、覗きこんでいる家政婦と目が合う。
「お目覚めになりましたね。お父さまがお帰りになりましたよ」
「! ……パパが……?」
 せっかく薫子がティーパーティーに来てくれたのに、なんてことをしてくれるのだと怒ろうと思った矢先、そう教えられると苛立ちは萎んだ。
 起き上がった大貴の前、家政婦は子ども部屋のカーテンを次々と開けてゆく。
「ほんとうに? パパの帰りは、あしたじゃなかったの……?」
「ご予定が、繰りあがったそうで御座います。ご帰宅してすぐ、応接室でお客様の応対をなさっていらして、大貴さまも顔を出されてほしいとのことです……」
 大貴は家政婦に急かされ、洗面に行った。歯を磨いて寝癖も直す。部屋に戻るとすでに家政婦はおらず、ブラウスから靴下まで一式、すでに見立てて用意されていた。
 白いブラウスの襟元に細いリボンを結び、半ズボンにハイソックスを履く。イギリスで暮らす祖母が買ってくれた、ヴィヴィアンウエストウッドのハイソックスは大貴のお気に入りだ。
 袖を通していると、寝起きでぼんやりとしていた意識がだんだんとはっきりしてきた。客人の応対をしている崇史が来て欲しいというなんて、イヤな予感がする。
(……また大人のひとに、ヘンなことされるのかな)
 イヤだ、と思って大貴はため息を零した。
 だけど今日は日曜だから──客が帰ったら、崇史は一日ずっと家にいてくれるかも知れない。
(そうだったら、いいな……僕、いろいろ話したいことあるんだよ。でも)
 期待はしすぎない。崇史は本当に多忙だから、土日もつき合いのゴルフや会食に出かけることもある。会社のために必要な人脈を維持したり拡げていくことも、社長の重要な仕事なのだというのは崇史がよく言っている言葉だ。
(わかってるよ、そんなこと。だけど僕のさみしさはどうしたらいいの……?)
 憂鬱な表情で、自室をあとにした。
 窓の向こうに広がる青空とは裏腹、大貴の心は今日もいまいち晴れない。

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 きちんとノックをしてから、大貴は応接室に入った。
 ローテーブルを挟んでソファが置かれた空間、使われている建材も調度品もそれと見て上質なものだとわかるが、華美すぎない。シックなダークブラウンでまとめられていて、ゴブラン織の絨毯の色味も抑えたもの。
「おはようございます。お客さまって、韮川先生のことだったんだー。どうしたの、こんなあさから」
 客人の姿を見た大貴の表情は、ホッとゆるんだ。見知らぬ大人に接待させられるのではと疑っていたが、崇史と歓談しているのは真堂家の主治医である韮川医師。
 彼ならば気心の知れた関係だから、多少おかしなことをされても大貴は我慢できる。
 韮川は主治医という立場と、崇史の友人でなければ──真堂邸には立ち入らせてはもらえないであろう、風貌の持ち主だ。
 だらしなく伸びっぱなしの髪と無精髭。衣服は診察時の白衣か、今日も着ている洗いざらしのワイシャツ姿しか大貴は見たことがない。
「ご令息、朝という用語を使えるのはせいぜい九時程度迄ですよ。時計をご覧になりましたか?」
 男前なのだから、もうすこし身なりをかまえばいいのに……と子どもながらに思う大貴に、韮川はそう言った。大貴が振り子時計を見れば、時刻は十時半を過ぎている。
「起きたばっかりだから、あさだもん。ね、パパ」
 韮川と向かい合ってブラックコーヒーを飲む崇史は、スラックスに、落ちついたブルーのカッターシャツ姿。
 私服でなくスーツ姿ということは、やはり今日もこの後どこかに出かけるのだろう。
 勘づいた瞬間、さみしい、と感じた大貴だったけれど──そんな気持ちは久しぶりに崇史と会えた嬉しさによって、かき消された。
「パパ、おかえりなさい」
 大貴は崇史に笑いかけてしまう。
「来なさい。大貴」
 カップを置いた崇史は、端麗な顔立ちを大貴に向け、自らの腿をポンと叩いた。
 大貴は顔を輝かせ、即座に従う。跳ねるようにスリッパを脱ぎ、崇史の腿の上に座り、擦り寄って腕を回した。崇史も大貴の腰に腕を回してくれる。
「会いたかったっ。僕、いい子にしてたよ!」
「竹村常務はいたく感激していた。その他に命じた接待も、うまくこなしたようだな」
「うん、ちゃんとしたよ、地下のドレイもいじめたし、いいつけぜんぶまもったんだ」
 顎の下をくすぐられるように撫でられるのは嫌いじゃない。むしろ好きだ、崇史にそうされるのは。半ズボン越しに尻肉を揉みしだかれたりしながら、キスも貰う。
「ん……ぅ……」
 唇を重ねるだけに留まらず、口腔内も貪られる。久しぶりに味わう崇史の舌遣いに大貴は恍惚とした……ぼおっとしてしまう。大貴のものよりも肉厚な感触は巧みに蠢き、大貴を痺れさせてくれる。
 抱きあう父子がディープキスをするという異常極まりない光景を間近にしても、韮川はまったく動じない。涼しい顔でコーヒーを味わっている。
 見慣れているだけでなく、韮川自身も大貴の性教育に加担している『共犯者』。大貴に対する投薬や、施術を行ってきたのはすべて韮川だ。
「わたしも子どもが欲しくなりますね。あなた方を見ていますと」
「ニラ先生に結婚なんてむりだよ。だってパパよりもへんたいだもん」
 唾液で唇をうるませながら、大貴が振り返る。崇史は大貴の脇の下から腿までもなぞりながら笑った。身体のラインを堪能するように掌を滑らせている。
「だそうだ、韮川君」
「はっはは、これは参りました」
「韮川君。プライベートで来てくれた所悪いが、大貴を診てもらえないか?」
 その言葉にハッとした大貴は崇史を見上げる。
 今日はいったい、何をされてしまうのだろう。

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「ぁ……ん、あ……!」
 応接室に漏れる大貴の吐息。
 鳴かせているのは韮川の指だ。いつも黒革の往診カバンを持ち歩いている韮川は医療用の薄いゴム手袋を取りだして嵌め、その手で大貴の素肌を撫でている。
「くすぐったいよ……、ニラせんせいぃっ……」 
 大貴の衣服は奪われて全裸に近い。ハイソックスと、ブラウスに締めていた細紐のリボンだけを首に残され、韮川の膝の上に乗せられている。
「触診ですから、耐えて頂かないと困りますねえ」
 耳元で喋られる吐息が首筋にかかるのも、大貴の身震いを誘ってゾクリとしてしまう。大貴は性感帯として、首筋が弱かった。
「ひぁぅ……!」
 後ろから両胸の突起を同時に摘まれ、ねじられる。
 きつくつままれるたびに跳ねる大貴を正面から見て崇史は満足そうだ。ブラックコーヒーを味わいながら、優美に脚を組んで微笑んでいる。
「見ないでぇ……、パパぁ、僕、はずかしい……!」
 大貴は頬を上気させながら瞼を閉じた。まだ触れられていないのにも関わらず、性器に熱が集まっていく羞恥がとてつもない。
 嬲られる姿を見られるだけでも恥ずかしいのに、ペニスに芯を入れてゆく一部始終を間近で観賞されてしまうなんて……
「ふむ。以前触診した際より、乳輪の直径が拡がったのでは。僅かにですがね。計測しましょう」
「いいよぉ、そんなの! やだぁ……!」
 恥部の測定は時々されるが、大貴にとっては辛い仕打ちだ。乳首にデジタル表示のノギスを当てられて精密に計られたり、睾丸の重さまでも把握されてしまうときは、恥辱からの先走りを涙のように流してしまう。
 二人きりで測定されることはほとんどなく、使用人たちや崇史の前でされることも辛い。
「では次の往診のときに計らせてもらいましょうか。必ずですよ、大貴君」
 韮川はひとまず引き下がってくれたので、身を捩って拒んだ甲斐があった。
「性徴は恥ずかしいことでもなんでもありません。当然のことであり、喜ばしいことですよ」
 韮皮は人形でも扱うかのように軽々と大貴の肢体を動かし、まるで尻叩きをするかのような体勢に変える。背中を天井に向けた大貴だ。
「ん、や……」
 医療手袋の感触を尻穴に感じ、妙な声を出してしまう。そこを調べられているのだとわかると、恥ずかしさはまた増した。絨毯を見つめながらも顔が熱くなってくる。
 大貴の蕾は見る者が見れば、肛門性交によって快楽を得ていることがすぐにわかるアナルだった。日常的な挿入で、蕾の入り口の肉は腫れるように盛りあがってしまっているし、色艶も濃いピンク色に充血している。
 まだ声変りも迎えていない少年がこんな尻穴をしていることが、愛好者にはたまらないようだ。この肛門を見ただけで興奮して射精した変態は何人もいる。
「また、塗り薬を処方しておきますからねえ。性交の後にはしっかり塗ってくださいね」
 傷ついた肛門をケアするための軟膏も、主治医の韮川が処方してくれる。裂けてしまってもそれを塗ると治りが早いので、正直なところありがたい。大貴は唇をぎゅっとつむり、拗ねたような顔をしながら頷いた。
 すると崇史からの声が飛ぶ。
「ちゃんと返事をしなさい」
「……はいッ、ニラ先生っ……」
 恥じらいながら返事をすると、また身体を持ち上げられた。崇史のほうを向いて座る最初の体勢に戻る。
「おやおや、立派に育ちましたね」
 大貴のペニスは完全に勃起してしまっていた。幼子の頭を撫でるように亀頭を撫で、微笑ましそうに韮川は言う。

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「先生っ、僕、ヘンなの……?」
 肉棒を握られながら、大貴は韮川に問いかける。
「診察で、検査なのに……こんなふうになって……」
「大丈夫ですよ。肛門部や、乳頭への刺激で勃起するのは男の子として当然の反応です。大貴君のご学友たちもこういった診察を受ければ、皆発情しますよ」
「そうなんだ……、ほんとう?」
「本当ですとも」
 韮川は軽く扱いてから、往診カバンから尿瓶を取りだした。蓋を開けると大貴のペニスの尖端にあてがう。
「さあ、検査はこれで終りです。採尿しますから、どうぞお漏らしになってください」
「えぇえっ……僕、おしっこしたばっかりだよー……」
 大貴は首を横に振る。目の前の崇史は穏やかに座っているだけで、助けてくれそうにない。
「無理いっ、せんせぇ……」
 膀胱を掌で押される。それでも絞り出せそうになくて困っていると「それでしたら」と韮川は言い、瓶をしまって今度は透明なフィルムケースを出す。再び大貴の男根を握った。
「精液採取にしますか。寝起きですから生きのいいスペルマ、採れますかねぇ?」
「! あぁあッ……!」
 強く握り締められたかと思うと、上下に擦られはじめる。刺激に大貴は力んでしまった。足指は反りかえる。
「ンっ、あッ、あ……ぅ、ひゃぁ……ん……」
 リズミカルに扱きながらも、韮川はもう片方の手で乳首を弄る。大貴が表情を歪めていると、崇史は告げた。
「いい機会だ、竹村常務以来のオーガズムだろう。韮川君に絞ってもらいなさい」
 大貴の性交は実父である崇史の管理下にあり、崇史の知るところでしかセックスは行われない。自慰行為も、禁止はされていないが、把握はされている。
 家政婦が大貴の部屋を掃除する際、精液の付着したティッシュなどがあれば崇史に報告されるし、衣類や下着が汚れているといった異変があっても報告が行く。
「自慰をしたならば、別だがな。したのか? 大貴」
 出張中の崇史にそういった報告は届いていない。するならば入浴時か、トイレかと目星をつけながら崇史は尋ねた。大貴は韮川の手淫を受け、切なげに身を揺らしながらも正直に答える。
「うん、パパ、一回したよっ、一回だけ射精したぁっ……!」
「何処で行った?」
「お、ふろ、……っ、あの、ね、っ、ドレイを調教したあとに、こうふんしてぇっ──……ああぁ、もうだめぇ……!」
 だめだよぉ、と大貴は振り絞るような声を出す。
 絶頂が近づいているのだろう。
「出させますよ、崇史君」
「ふふっ。……宜しく頼む」 
 大貴の射精であるのに、韮川は崇史に許可をとる。
 本人の意思の無いところで決定される絶頂。
「ぁああああんッ、パパぁ──、先生ぃいいッ……」
 擦られる動きが速くなった。大貴は胸を反らして起った乳首を崇史に突き出し、突っ張った脚を全開させる。
「出るぅ、イクうぅう……イク──……! きもちいいいぃ……!!」
 溢れた白濁はあてがわれたフィルムケースに吐き出され、どろりと溜まる。
 半ば放心するように脱力する大貴と、愛おしげに容器の蓋を閉める韮川だ。

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 韮川は「大貴くんのスペルマを、さっそく顕微鏡で観賞します」と嬉しそうに帰っていった。
 応接室に残ったのは父子のみだ。大貴はテーブルの上にほぼ裸の身を横たえている。
 崇史はソファに座ったまま、その姿を眺めていた。
 絶頂の余韻を未だ彷徨い、目を伏せたままでぐったりとしている大貴の肢体は腰の位置が高い。クォーターである崇史の血を引いたからで、脚の長さも日本人離れしていた。
 しかし──美しく肌触りのよい肢体とは相反し、おぞましい傷跡も目立つ。
 衣服に隠れるところを狙って、崇史が折檻してやった痕だ。腹部や太腿、臀部に集中している。
 崇史が海外出張に行っていたためしばらく罰しておらず、抓ったり叩いたりした傷は癒えてきていて薄いが、古傷は色濃く主張していた。消そうと思えばレーザー等を使って消せるものを、わざと残してやっている崇史気に入りの傷たち。崇史は大貴につけた傷のひとつひとつに思い入れがあり、愛着がある。
 例えば、性器のやや下の内腿に走っている線上のケロイドは、悪戯をした大貴を叱る際に熱した細い鉄棒を押し当てたもの。そのときの絶叫はすばらしく、いまも崇史の鼓膜にこびりついている。
 激しく泣きながら「ごめんなさい!!!」「ゆるして、パパー!!」などと繰り替えす大貴の姿は可愛かった。拘束台の上で。
「……最近のおまえはいまいち元気がないようだ。好物のザッハトルテも、残す日があるらしい」
 執事から受けている報告を、大貴に話す。
 大貴は瞼を伏せたままだ。
「そろそろ思春期か。なにか思うところがあるのだろうな、大貴なりにも」
 おおよそ、崇史には予想がついている。令嬢・薫子とのことが少なからずあると。
 以前は無邪気に薫子へなついていた大貴が、近頃少しばかりおかしい。
 薫子は、勘当されているとはいえ名家の娘だ。家柄に見合った男子と、すでに婚姻の話も進んでいるかもしれない。大貴もそういったことに気づく歳になったのだろう。
「……せめて……ふつうにそだててほしかった」
 腕を伸ばして腹部を撫でてやると、大貴はぼそりと呟く。悲痛さを滲ませた嘆きを聞いても、崇史の表情は変わらない。

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「どうした。突然に──」
「エッチなことなんて……もう、したくないんだよ。さっきみたいにはずかしいことも、本当は……」
「その請いは却下だ」
 言い切ってやると、大貴はかすかに震えた。
「おまえはパパの性玩具だ。それはおまえが生まれたときから宿命づけられている」
「そんなの。い、イヤ……だ……」
 薄目を開いた大貴の表情は歪む。
「何故拒む。何が不満だ、欲しいモノがあるのならどんなモノでも買い与えてやろう」
「ちがう、ちがうよ……!」
 その瞳が潤みだす理由が、崇史にはわからない。性的に愛玩する以外は、何不自由ない生活をさせているつもりだし、酷い束縛もしていない。
 むしろ、好きにさせているほうだと、寛容な親であるほうだと崇史自身は思っている。
「ぼくはなにも欲しくないッ、ただ、ただ……」
 ついに顔に両手をあてて泣き出してしまう大貴に、やれやれと肩をすくめた。このところ、大貴がどうも精神的に不安定なのも、思春期ならではのことなのだろうか。
 立ちあがった崇史は大貴の太腿に手をかける。
 テーブルの上で開かせると、萎えかけて半勃起になった性器がそこにあった。
「! いや、だぁあっ、もうやめて……」
 愛撫を加えてやろうとする崇史の手を、大貴は掴む。引き剥がそうとし、脚を閉じようとする。崇史はそんな腿を容赦なく叩いてやった。
「開きなさい、大貴」
「パパ、ぼくがんばったよ、ニラ先生にちゃんと診察してもらったよおっ……もう服着たいっ」
「駄目だ。まだ俺との営みが終っていない」
「あ……ン……!」
 力づくでペニスを握ってやり、もう片方の手では肌をなぞる。首筋に指を這わせ、唇も弄った。
「パパに抱かれるのは嫌いか?」
 口内に指を捩じ込みながら尋ねると、大貴は首を横に振る。崇史はさらにわからなくなり、困惑してしまう──崇史もその表情を、やっとしかめさせた。
「すきだよ……! パパにもっと、さわってもらいたい……」
「ならば、何故拒む」
「……エッチは……もう、いや、きら、い……」
「こんな身体をして、嘘を吐くのか」
 軽く素肌を撫で回してやっただけなのに、大貴の性器は再び頭をもたげている。乳首に至ってはつまんでもいないのにぷっつりと突起を表しているし、唇から零れた唾液もいやらしい。
「俺に……俺に触られて嬉しいんだろう……!」
 両肩を掴み、衝動的に崇史はくちづける。すると大貴は舌を絡めてきてくれた。イヤイヤ言う割に従いもする大貴がわからない。こういった態度も単に反抗期特有のものなのかと、崇史は片づける。

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「あッ、ひぁあっ…………」
 崇史は欲望のままに突き入れた。傷とアザの目立つ白い腿を割り、串刺しにする。挿入に伴って大貴は上半身を反らし、歯を食いしばり涙をポロポロと跳ねさせた。
「あぁあ──……!!」
「良い締めつけだ……」
 自ら調教した後孔の出来に、崇史は満足する。
 幼児の頃、はじめは細いスティックと指で弄ることにより道筋を作り、しだいに生の男根を使って慣らしていった。一朝一夕で出来た雄膣ではない。丹念に、計画的に、作り上げた背徳の蕾。
 だが、開発済とはいえ、子どもの腸内なのでまだ狭くきつい。なじませるようにゆっくりと抜き差しを繰りかえして、ほぐしてゆく。
 潤滑剤に使っているのは韮川の置いていったクリームだ。抜き差しを繰りかえすほどに大貴の分泌する腸液や崇史の先走りと絡み合い、粘りを増す。
 そのうちに、崇史のペニスに柔襞が絡みついてくるような感触に変わってきた。大貴の尻穴は崇史の男根に良く合っていて、凹凸がぴったりとあてはまり、一分の隙さえなく結合できる。
 崇史自ら調教したので当たり前といえば当たり前かもしれないが、血が繋がった親子ゆえの身体の相性の良さというものもあるのだ。

 ……まさしく禁忌の快楽。失楽園の林檎の味はあまりにも甘美、貪り尽くし、堕天するのも必然だ。

「やぁああっ、パパー……!」
 グチュグチュと音をたてながら、崇史は激しく穿ちはじめる。大貴の片足を肩に抱え、より深く突ける体位に変えると悲鳴のような嬌声が上がった。
「あッ。あっ。あ……」
 ぐすぐすと泣きべそをかく大貴を犯している、という状況も崇史を昂ぶらせてしかたがない。うるむ瞼をこすりながら、しっかりと後孔で咥えこんでいるさまは倒錯的に淫靡だった。
「大貴……」
「ひぁ……ン、あぁ……ん……」  
 最奥まで貫いてやれば、こんな子どもの身体のいったい何処に崇史の性器を収めているのかと疑いたくなるような、ややグロテスクな様と化す。
 昔、いまよりも小さな身体のころに挿入していると、本当に胴全体でペニスを受けとめているかのような姿になってしまっていた。
 そのころに比べれば、11才に成長した大貴は痛みを叫ぶことも減った。大貴の身体は男根を受けいれるための性玩具として順調に育まれている。
 傷みどころか、挿入によって大貴も快楽を得ているのは天井のシャンデリアを指す、早熟なペニスが証拠だ。
 完全に勃起し、尿道孔をヒクつかせ、透明なカウパーを滴らせている。
「きもちいよぉ……、あんっ、は──……」
「……長い出張で、さみしい思いをさせたな。しばらく毎晩抱いてやろう。それで機嫌を直しなさい」
「う……ん、パパ……」
 大貴は頷きながらも悲しげだ。なぜ喜びではなく、そんな顔をするのか崇史にはわからなかったが、了承されたのでそれ以上は気にしない。
「……パパ……パパぁ……」
 軋み続ける揺り動かしのなかで、大貴は崇史の両肩を掴んでくる。甘えるような愛らしい姿に誘われて、崇史は絶頂へと近づいていった。