繚乱

1 / 4

「まさか美砂が、楓を知っておるとはなぁ……」

 幕開けた宴の中、壮一は盃を呑みつつ、感心したような口ぶりでそう言う。
 
 隣の美砂子は、壮一の愛人の“妹”だという。
 それは周知の事実らしく、楓の客である佐々木も、どの出席者も知っている。
 愛人嬢は体調を崩し宴に来られなくなったが“華がいなければ淋しい”ということで、代わりに美砂子を連れてきたのだと壮一は説明した。

「奇遇なことがあるものだね、楓くん」

 美砂子との雨宿りの出逢いを話すと、佐々木も驚きをみせた。

 ……楓は彼に酒を注ぎながら、不慮の再会に困惑する。壮一という男の考えも理解できない。未成年の少女を連れ込むなんて、信じ難かった。

 きっとこれから酒宴は淫靡さを増すのに、美砂子を此処に座らせておいていいのだろうか?

 純粋そうな瞳に、男性同士の卑猥な交わりだとか、迸る精液だとか、勃起する性器だとか、そういったものを映させていいのか?

 思考を巡らせる楓だったが、プロの娼妓であるがゆえに表立ってそのような不満は見せない。内心とは裏腹、いつもと変わらぬ様を装う。

「美砂、せっかくの機会だ。楓が凌辱される所を見てみるといいぞ」

 そんな楓に刺さる、壮一の一言。
 ──楓は息を呑む。

「いいよ、そんなの、ミサ見たくないよぅ……」
「美砂ももう中学三年生なんだ、保健体育の勉強もしないとなぁ?」

 壮一は下卑たふうにくつくつと笑う。拒否する美砂子の意志は汲み取られず、楓をここに転がせ、と壮一は命じた。主催者の意向は絶対だ。
 周りの娼妓と招かれた客は、壮一の席の前に座布団を放り投げては畳に敷きつめる。

「! なっ、そんな……!」

 楓の両腕は複数の客達に掴まれた。
 助けを求めたくて佐々木を見たが、佐々木もこの場に居合わせる好事家と同類。行ってくると良いよ、と言って快く送られてしまう。

2 / 4

 楓は乱暴な動作で座布団の上に放り出された。

 背中を打ち表情を歪めていると、群がる男達に浴衣をめくり上げられる。下着は着けていないため、早速性器は美砂子の前に剥き出しだ。

(は、ずかしい……ッ──!)

 身体を押さえつけられながら、火が出そうなほどに顔が熱くなるのを感じる。
 売女ならまだしも、一般の、ふつうの女の子にこんな姿を見せるのは……
 はじめてだった。

「美砂子ちゃん、見てご覧。これがおち●ぽだよ、赤ちゃんを作るときに使うんだよぉ〜」

 客達は楓の肉茎を摘んで楽しそうに説明する。

「楓くんのは仮性包茎だし、お毛々もないから小学生みたいで可愛いねぇ」
「ほとんどチ●コ使わせてもらえないからなぁ、発達が遅いんだろ、可哀想になぁ、はははッ」

(いっ、嫌だ……やめてくれ……!!) 

「どうした、恥ずかしいのか、こいつ」
「性玩具といっても年頃だからな。女の子に丸出しは照れちゃうんだろ」
「ほら! 股開け股! ケツの穴もご披露だ」 

 逆らうことはできない。
 腿を叩かれ、楓はM字に開脚する。

「これが睾丸だ。触ってみるかい、美砂子ちゃん」
「お尻の穴は痛んでるね、毎日おじさん達のチ●ポ挿されてるからねぇ」
「そうだ眼帯も取ってやれ。美砂子ちゃん、驚くんじゃないのかい」

 瞼に指が近づき、ガーゼの眼帯も奪われた。

「くうッ、眩…しい……!」

 光に弱い左目に、いきなりに染み渡る広間の照明。
 楓は眉間に皺寄せてしまう。

「脱がせ、脱がせ、全部脱がしちまえ」
「全裸公開ーーー」
「美砂子ちゃん。どうだい、コイツの左目は」

 帯を解かれ、胸元もはだけさせられながら、少しずつ光に慣れてきた視界に飛び込む美砂子の顔。

 美砂子は拗ねたような表情をしていた。アノ雨の日に語り合ったような、嬉々とした純粋な姿ではない。明らに不快感を漂わせている。

 目が合って、楓は哀しくなった。
 こんな再会は最悪だ。
 運命的かもしれないけれど、最悪の出会いだ──

3 / 4

 客の一人が演歌を歌い、他の者たちは手拍手をしている。その中で楓は膝立ちをし、拍子に合わせて腰を振らしていた。浴衣を剥かれ、全裸に帯だけを締め、あらわなペニスをユサユサ揺らしながら。

 目の前には壮一と美砂子。
 
 羞恥で楓の顔は真っ赤に染まり、けれどもその恥ずかしさが刺激となって、性器は芯を入れはじめていく。こんな事で勃起してしまう事実がまた楓にとって恥ずかしくてたまらない。
 
 ……平常時から勃起までの一部始終を、美砂子を含めギャラリィに見せつける結果となった。
 一曲が終わると、肉茎は完全に屹立している。

「次は楓も歌うといい! 童謡なんぞどうだ?」
「そうだねえ、おい楓、適当にお唄を歌いなさい。音楽の授業で習っとる唄でもいいぞ?」

 誰かの発案に、同調する客達。
 辛くて歌いだせず、唇を震わせていると早く歌え!との野次が飛んだ。

「たっ、高くー、ひろがー……」
「おい! 尻もクネクネさせながら歌いなさい!」
「ひ、広がる、空にー、風がー……」

 背中で組んだ手を握りしめ、勃起してゆく性器を振りながら歌う合唱コンクールの曲。広間には手拍子と馬鹿笑い、楓の独唱が響き渡った。

 歌い終えると楓の興奮は増し、先走りの蜜は座布団に垂れそうに滴る。
 
「とんだ変態ガキだな、こいつは! ち●ぽ起てて、うれしそうにして」
「全裸でお歌が、そんなに楽しかったのか?」
「さすがは四季彩の商品だ、見せつけるのが大好きなんだなぁ」

 笑う男達の一人は、楓の尻の谷間に指を這わせた。

「んふ、あっ……ッ!」

 客のすることには逆らえないので、手を組んだ姿勢でされるがまま。肛門の入り口をなぶられ、指先も軽く挿れられてしまう。

 そのうちに運ばれてくる、碗に注がれた順滑液。
 客はそれを手に浸すとぬめらせ、楓の尻孔を本格的に開き、指を突き挿れてはナカを掻く。

「ひぅンっ! あッ、あっ、あっ……!」

 何本も指を挿れられ、掻き回されながら楓は声を漏らした。意識してやっている訳ではない。自然に、嬌声にも似たアエギを零してしまうのだ。

「そらそら、気持ち良いな? お尻に指入れてもらって感じてる顔も美砂子ちゃんに見せるんだよ」
「ぅふうぅッ……!」

 他にも複数の客達が膝立ちの楓に群がり、別の男は楓の乳首に吸い付いたり、唇を奪い舌を挿れてくる者もいる。それでも楓は姿勢を維持したまま、好きなように弄んでもらう。
 
 そんな風にしっかりと性玩具の仕事をこなしながら、楓の内心は乱れに乱れ、平静を失ってゆく。

 もう、美砂子を直視することができない。

 顎を掴まれて無理矢理に美砂子の方を向けられても、少女を瞳に映せない。恥ずかしさと混乱と身体に群がる性的な刺激でショートして、頭も働かない。

4 / 4

「ようし、楓クン、もう一つ芸をやるか?」

 パンッと尻を叩かれてからはアナルに、潤滑油にまぶされた様々な品が挿入される。
 楓は何が抜き差しされているのかを見せてもらえず、肛門に感じる感触をたよりに、挿れているモノを当てなければならない。

「あぁあッ。あぁあ……!」

 宴会の場にある箸や酒瓶、用意されたゴルフボール、突起物のついたディルドなどを突っ込まれ──正解すれば褒められるが、間違っていれば玉袋をキツク握られたり、股間をスリッパで叩かれるなどの罰を受けた。

 その度に上げてしまう悲鳴は、客達には良い酒の肴。出席者達は皆、楓を見て笑っている。

「さぁ、今は何を突っ込まれているかな?」
「んふ……ッ、あっ、あッ……」

 そして、終いには佐々木に、ペニスを挿入された。

「おいおい! 本番は早いぞ、まだ宴は始まったばかりだっていうのに!」
「もう交尾か、はっはっは!」

 会場に響く、更なる笑い。

「……答えるんだ楓くん、コレは何だい?」
「チ、チ●コ、ですッ……!!」

 正解のはずなのに、頬をぶたれてしまう。
 鮮烈な痛みに楓は『あッ!』と声を上げる。

「呼び捨てにしちゃいけないよ。お客さんのチ●ポは、楓くん達みたいな助平玩具よりも偉いんだから」
「はうぅぅ……ッ、ン……!」
「エッチなことしか考えてなくて、人前で自慰も大便も平気で出来るような君達よりもね!!」
「お、おチ●コ、さまぁっ………!!」

 激しく揺らされて、楓の表情は歪む。

 畳に爪を立てて耐える……、辛い。
 こんなふうに恥辱を味わされ犯されることも、どうしようもない淫乱だと罵られることも……好きで性商品になった訳ではないのに。

 それなのに、快感を感じている事実も否定できない。骨の髄まで被虐のM奴隷になってしまったのか……楓は悲しみの中で混乱する。
 楓の意識、羞恥と快楽と困惑は混ざり合う。

 ……しだいに周りも騒がしくなってきた。楓の交尾をきっかけに、他の客達も娼妓を抱きはじめたのだ。

 交錯する甘いアエギと、
 肌と肌のぶつかる音と、
 客の罵声、
 嬌声、
 笑い声。

(……こんなところに……あの子は、いちゃいけない……のに……!!)
 
 まだ、美砂子はこの広間にいるのだろうか?
 周りの騒ぎに掻き消され、美砂子の声は楓に聞こえない。美砂子の席を見て確かめる勇気もない。
 
 犯されながら、他の誰かのペニスを咥えさせられ、両手にもそれぞれに掴まされて扱かされた。
 楓は大人たちのペニスに埋もれていく。
 犯されている最中だというのに、さらに突き立ててくる者も現れる。

「ひぐン、ッ!! うぅあぁッーーーー!!!!」

 二本を同時に挿されてしまう。肛門を破壊されるような衝撃に、楓は叫んだ。
 そうしている間にも、構わず肌には他の男根もまとわりついた。ぬめる先走りとローション、早くも射精して吐き出された白濁。髪も肌もぐちゃぐちゃにされて、楓は乱交に溺れていく。