▽ 邂 逅 篇

茜は琥珀に輝く両眼で、
悶える兄を見下している。

序章 開花の聲

知っているかね、金次第で
酒池肉林も作り出せる場所が現代にあるのを。

第一章 誘蛾灯

朦朧とした薄目で見たのは、汚濁の水たまりを
びしゃびしゃと歩いてくる白い素足。

第二章 微睡

かえでくんは善い人。ミサ分かるの。きたない大人を
たくさん見ているからね、すぐに分かるの。

第三章 雨惑い

髪も肌もぐちゃぐちゃにされて、
楓は乱交に溺れていく。

第四章 繚乱

アークトゥルスも見える。獅子座のデネボラと合わせて、
春の大三角形っていうんだ。

第五章 星宵

あいつの左目は化け物の目だ。

断章 拐

風の音に紛れ、悲鳴のようなものも聞こえる。
此処に来るといつもそうだ、騒がしい。

第六章 緑陰

冷ややかな手のひらの感触に包まれたかと思えば、
次の瞬間消えうせる。

第七章 月映し

美砂子の傍らに腰を下ろし、神社の風景を眺めながら
楓は語った。それは心からの本音だ。

第八章 戯園

楓は中庭に面する簾戸を開ける。夜の風はぬるく、
楓の黒髪をゆるゆると撫でていく……

第九章 空蝉

あの夏祭りの夜に、楓が言った台詞を返す美砂子。
楓は思わず吹きだしてしまう。

第十章 陽炎

楓くん。また指名したいよ……何故こんな事に。

断章 囁

美砂子のことを考えるとまた胸がズキン、と
苦しくなった。思わずタオルで口許を押さえる。

第十一章 因果

当たり前じゃないか。俺は心配で──
ケガはないのか?

第十二章 破戒

目覚めた気持ちは消せない。
たとえどんな目に遭おうとも。

第十三章 断罪

会話を遮るのは、複数の足音。
楓と茜は同時に扉のほうを向く。

第十四章 秋霜

瞼をそっと閉じてみる。お互いの心音が
脈打っているのがわかる、あまりにも静かな空間の中で。

第十五章 一夜の契

佐々木は、氷のように澄んだ海を眺める。

断章 漣

薄化粧されてゆく四季彩の風景。
ため息を零せば、白く曇った。

第十六章 細雪路

焦げ付くような、焼けるような痛みが鋭い。茜に本当の
左目をえぐり取られたときの激痛を楓に思いださせる。

第十七章 如月

きっとこの足跡はすぐに
波に攫われて消えるのだろう。

終章 春宵に消ゆ



▽ 茜 篇

夜の闇に今にも溶けてしまいそうな、
うつろに揺らぐ僕の身体を。

…Another eyes of amber…