1 / 1(なんだなんだ、楓くんは……)宴の中、佐々木は気に入りの少年を探す。 目を離したすきに、楓が見あたらない。さっきまで広間の隅でぐったりと倒れ込んでいたはずなのに…… 「どうかしましたか。お客さま」 声を掛けられて、佐々木は振り返った。 細身の娼妓が立っている。楓も細っこいが、さらに華奢な姿だった。病的なほどに。 「いや、楓くんを探していてね。見失ってしまって」 「楓ならさっき部屋を出ていきましたよ、さぼるつもりでしょう」 「……そんな子じゃないよ、あの子は」 淡々と話す娼年に、佐々木はそう答えた。 楓を指名しはじめたのはまだ最近、知り合って間もないが、言い切れる。仕事に対して楓の態度は真面目だ。 「へえ、ずいぶんと買い被ってるんですね、あいつのことを……」 娼年は佐々木にそっと近づき、耳打ちをする。 「お客さまへ、僕からの忠告です。楓には気を付けたほうが良い……あんた手玉に取られてるよ」 「エッ?」 「あいつの左目は化け物の目だ。男を惑わす魅了眼、普通の目じゃない」 「なにを言っているんだ、きみ!」 佐々木は憤慨する。 けれど娼年は、さらに小声を紡ぐ。 「真実ですよ。あんたは楓に魅入られてるんだ、巧いこと騙されてる。楓よりも──僕と遊びませんか?」 娼年は妖しく微笑った。畳に膝をつき、佐々木の浴衣を探りいきなりにフェラチオをはじめる。 「ちょっ……きみ……!」 「お客さまは僕のタイプかもね。さっき、楓とやりまくってる所見て、嫉妬してました。僕もあなたみたいな人に抱かれてみたい」 「……!」 舌に絡めとられ、佐々木は走る快感に震える。 言っていることは滅茶苦茶なのか、本当なのか。分からない……ただ、この快楽だけは真実だ。 「……きみの、名前は」 艶めく髪を撫でながら、尋ねてみた。娼年はペニスから唇を離し、答える。 「由寧ともうします」 「ユネ……くん……」 「以後、お見知りおきを」 礼儀正しいのか、ぞんざいな態度なのか、混ざりあう二面性を持つ娼年。彼の口奉仕を受けながら、佐々木は困惑に揺れる。 |