夜光虫

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 目覚めると、辺りは暗闇に包まれていた。
 祥衛は天井を見つめつつ、身体を広げる。左腕を中心に身体がジクジクと痛む、あのまま死んでも良かったのに、どうやらまた死に損ねたらしい。ため息を吐いて、祥衛は額に手をあてた。
 記憶を辿る。教室になじめずに帰ってきて、なんだかとても苛々したから手首を切った。そこまでははっきり覚えている。
 そのあと──啜り泣く妹の声がうざかったからこの現実から逃げ出したくなり、睡眠薬を飲んだ。母の薬箱を開けて、何錠か口に含むと水道の水をがぶ飲みして、また自室の畳に倒れて──そのうちにいつのまにか眠りに堕ちたらしい。
 真っ暗な世界、杏の声どころか物音一つしない。祥衛はゆっくりと身体を起こした。制服のズボンを履いたまま上半身は裸だ。仄闇の中、自分の身体が血に塗れているのが見え、見てしまうと痛みが増した。傷を認識したからだろうか。
(あぁ……)
 一体、俺は何をしているのか。正気に返るとこみ上げるのはいつも後悔。紫帆を振り切るように逃げだし、杏を裏切り自傷をした。せっかく、心配してくれているのに。自分のことを想ってくれる、数少ない存在なのに。祥衛は唇を噛んだ。
(どうして、俺は、うまくできないんだろう……)
 半日も教室に居られない。同い年の子供達が当たり前のように毎日通う場所に、数時間と耐えられない。叱言に嫌気がさすことはあるけれど、気遣ってくれる紫帆の心は素直に嬉しくて、そんな紫帆のために登校したのに、やっぱり馴染めず、無理だった。
 杏にも酷いことをした。もう手首を切らないで、と訴える幼い妹。その懇願をまた踏みにじって血に汚れた姿を晒し、目の前でクスリを飲んだ。めちゃくちゃなことをしてしまった──
 
 俺みたいなヤツは、本当に死んだほうが良いな。

 静かな部屋で思い、ふっ、と僅かに唇をゆるめた。自嘲の薄笑み。
 祥衛は立ち上がると自室を出た。体内に残るデパスのせいなのか、足元がふらついてしまう。手すりを握って一段一段下りてゆく。
 誰もいないのか、一階も真っ暗だ。母が戻ってきて、杏を連れ出しまた出かけたのだろう。
 廊下の灯りをつけると、光に驚いてゴキブリが逃げる。素足で下りてきてしまったことを祥衛は後悔した。汚物まみれの惨状には何年住んでも慣れない。
 どうやら祥衛が寝ている間に親子でコンビニ弁当を食べたらしい、放られたゴミには新しいものがある。

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 潰れた虫の死骸や、こびりついた食べカスなどを出来る限り避けて台所に行くと、廊下同様、此処もゴミと物で溢れていてあちらこちらにゴキブリの姿がある。
 祥衛は蛇口をひねって、水流にそのまま口をつけた。汚物の下敷きになったグラスなんてとても使えないのでいつも直接飲む。
 乾きを癒すと、空腹に気付いた。そういえば朝からなにも食べていない。祥衛は台所を出て自室に戻る。階段を上りながら考える、今日は何を食べようか。
 ところで今は何時なのだろう。部屋に入ると祥衛はカバンを手にした。携帯電話を取り出すと〈PM 22:37〉を確かめる。結構、長い時間眠っている。画面には不在着信と未読メールを知らせる表示もあった。紫帆からのものだ。
(どうして、紫帆は、俺みたいなヤツに……かかわるんだろう……)
 祥衛は文面を読むことなく、携帯を閉じた。机の上に置いて私服に着替える。
 紫帆のことはよく分からない。何故こんな自分に構うのか、祥衛は不思議でならない。他の子供達みたいに、おかしな同級生なんて無視したほうがいい。そっちのほうが賢い選択だ。
 カール・カナイのジャージを着ると電話が光った。常にマナーモードにしているので、音は鳴らない。どうせ紫帆だろう。そう思って手に取ると違った。表示されている名前は斎藤 怜(さいとう れい)。
 着信に出るか、出ないか。祥衛は迷う。
 彼は収入源のひとつだ。半年前に駅裏でナンパされ、それ以来たまに身体を買われる関係である。怜は祥衛を少女だと思って声を掛けたらしいが、少年と分かっても態度は変わらなかった。おにいさんは男の子も好きだよ、そう言ってキスをしてくれたアノ夜。
 彼の素性について、祥衛は何も知らない。主に夜働いていることだけは分かっているが、何の仕事をしているのか、どんなふうに暮らしているのかは謎のままだ。怜のほうも必要以上に質問してこないので、詮索されるのを好まない祥衛にとって、彼は都合がよかった。
『起きてたんだね』
 結局、祥衛は通話ボタンを押した。
『もう仕事終わっちゃってさ。予定より早く。時間空いちゃったんだよねぇー』
「……そうなんだ」
『キミはヒマかい。ヒマなら会おうよ、俺と』
 祥衛はまた、少し迷う。先日盗んだPRADAの財布にはまだ何枚も紙幣が残っている。だが、金はたくさんあっても困ることはない、そう思って了解の返事をした。
「いいけど……」
『よかった、嬉しいなぁ。例のところで待ち合わせ、何時にしようか?』
 三十分後に落ち合う約束をして、通話を終える。例のところとは近所の公園のこと。いつも其処に車で迎えに来てくれる。
 祥衛は携帯の他に、セブンスター・メンソールとライターも持って部屋を出た。

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 紫帆にはメールの返事をしなければならないが、何と文章を打てば良いのかが分からない。謝ったほうがいいのだろうか、けれど上手な謝り方が思い浮かばない。
 眉間に皺寄せ悩みながらも階段を降り、玄関に行く。素足にサンダルを履くと引き戸を開けた。外は家の中よりも涼しい。夏はもうすぐそこまで来ているけれど、夜風はまだ、幾らかひんやりとしている。
 祥衛は日中よりも夜が好きだ。太陽の光も眩しさも苦手だし、天気がよくて澄み渡ると苛立ちさえ覚える。透明感のある青空はまるで自分と正反対だと思っていた。
 俺に似合うのは、じめじめとした暗闇。路地裏を歩きながら改めてそう感じた。太陽は容赦なくすべてを照らして、焦がして、明るみに晒してしまうけれど──月光の仄暗さは優しい。漆黒の空も好きだ。
 表路に出ると、街灯がオレンジの光を零していた。照らされながら進む道のり。クスリの余韻か、まだ完全に意識が覚醒していない。ぼんやりとしてしまって、遠くに見える大通りの信号機であったり、行き交う車のライトが、色ガラスを透かしたように幻想的に映った。
 ある瞬間、携帯電話が震える。歩きつつも取り出すと紫帆からの着信。手にしたままで立ち止まり〈沢上 紫帆〉と表示された画面を見つめる。出なければいけない……出たほうがいい……出なければ……想いがぐるぐると廻っているうちに電話は切れてしまった。暗くなった画面を手に、祥衛は立ち尽くす。
(あぁ……)
 電話に出ないし、メールも返ってこない。紫帆は今頃どんな気持ちでいるのだろう。怒っているのだろうか、それとも昼の杏のように、泣いているのだろうか。そんなことを考えると申しわけない気持ちになって、余計に『謝らなくては』とか『うまく説明しなくては』と焦り、どんな言葉を紡いだらいいのか見失ってしまう。
 彼女に対しては、他の同級生達とは違う特別な想いを感じる。本当は大切にしたくて、だからたまにはいうことを聞いて学校にも行ってみるけれど、うまくいかない。今日もかえって紫帆を傷つけた。こうして贖罪のセリフも言い訳も思いつかないうちに、ますます彼女は傷ついているかもしれない。
(なにか言わなきゃ。なにか。どうすればいい……)
 電話をしまって、祥衛は歩き出す。憂鬱に染まりながらも歩を進めていると中央公園に辿り着いた。
 まだ怜はおらず、祥衛はブランコに座った。独りでいると紫帆のことばかり考えてしまうので、早く来ればいいのになと思う。セブンスターメンソールに火を点けて味わいつつ、時間を潰した。
 吸っていると、一匹の猫が近づいてくる。この公園に棲みついているノラ猫で、祥衛の妹の杏はクッキーという名で呼んでいた。

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 近所の主婦達がミーちゃんと声を掛けているのも聞いたことがあるし、学生達がポロとかパロとかそんなような名前を付けているのも祥衛は知っている。実際の処、この三毛猫には本当の名前なんてないのだろう。
 祥衛の足元に猫は寄ってきた。人間慣れしていて、にゃあ、と鳴きながら祥衛を見上げる。
(エサがほしいのか?)
 それなら、自分でとってこいよ、俺はそうやって生きてきたんだ。甘えればエサやミルクを与えてもらえるとでも思ったら、大間違いだ……
 祥衛は猫に向かって蹴る素振りをした。そうすると猫は驚いて逃げる。一目散にグラウンドを駆け、茂みにジャンプして飛び込む。
 猫の逃亡を見届け、吸い殻を指で弾く。すると祥衛に向かってクラクションが鳴らされた。振り向けば公園脇に停車した白銀のBMWが見える。怜が乗っている車だ。
 祥衛は立ち上がった。車に近づいてゆくと、運転席に座る怜はうっすらと微笑んでいる。
 扉を開けて、祥衛が乗り込むのは助手席。スピーカーから流れているのは流行の洋楽で、怜はいつものよう、ホスト風にスーツを着こなしている。はだけたシャツの胸元にはシルバーのネックレスが光り、袖口から覗くのは高そうな腕時計。実際に彼がホストなのかどうかは分からないが、身なりやまとう雰囲気、生活する時間帯などから、平凡な仕事をしているようには思えない。
「やぁ。今夜も可愛いなキミは。ホントに美しいよ」
 歯の浮くようなセリフも、いつも通り。怜は祥衛に指先を伸ばしてきた。髪を撫で、愛玩する様に滑らせる。
「祥衛、おなか、すいてるでしょ?」
 どうして分かるんだろう、祥衛は無表情を維持しつつも、内心驚いた。怜に顎を掴まれて、軽く口づけを与えられながらも戸惑う。
「ねぇ……ナニが食べたいのか言ってごらん」
「べつに、なんでもいい……」
 唇をなぞられて答えた。祥衛は目を反らし、窓のほうを向く。無人のグラウンドを瞳に映した。
「本当に? じゃあさ俺がごはん作ってあげようか。こう見えてね、料理は得意なんだよ」
 怜は指を離し、ハンドルに触れる。そして車を動かした。窓の外で風景は動き出し、通り過ぎてゆく無人のグラウンド。
「俺の家に行くのは、イヤかな?」
「……イヤじゃない……けど」
 いいのだろうか。迷惑じゃないのだろうか。流れる夜の街を眺めつつ、祥衛は思った。いつも怜と向かう場所はホテルと決まっていて、彼の自宅は初めてだ。
「けど、何だい」
 車は大通りに出た。前方にはそびえる高層ビルや、様々な色のネオンが見える。

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 不夜城を思わせる繁華街の彩り。怜はそこに突き進む。
「全然迷惑じゃないよ、祥衛」
 発された言葉に、またもや祥衛は驚いた。怜はどうして、こうも自分の考えを読んでしまうのだろう。そんな戸惑いさえも見透かしたのか、ふふ、と怜は薄笑んだ。
「キミみたいなカワイイ子に来てもらえるなんて、大歓迎なのさ。俺はね」
 運転する横顔を、祥衛はちらりと盗み見る。怜は柔和な顔立ちをしている。髪が長いせいもあり女性的な造作だ。しかし、体つきは男性そのもの。背丈は高く、手足も骨張っている。中性的な魅力を持つ彼の年齢さえも祥衛は知らないが、二十代の半ばだろうかと推測する。
「やっぱりもう、襲っちゃおうかなぁ」
 向かう途中に突然、怜は呟く。景色を眺めていた祥衛は何かと思い、運転席の方を向いた。するとスピードがゆるみ、道路脇に停車する。
「な……っ?」
 唇を奪われて、祥衛は驚く。いきなりに捩じ込まれた舌先は生温い。ぬめる感触に口の中を弄ばれ、掻き混ぜられる。大人の舌は巧みに蠢き、痺れるような快感を生み出した。
 感じつつも、祥衛が気になるのは窓の外。等間隔に街灯の灯りが並ぶ通りには、普通に人が歩いていた。車内のディープキスを見られたら、恥ずかしい。それも、男同士でしているところを知られたら……
 唇を離した怜は、指先を這わせる。ジャージの生地をなぞり、股間に辿り着いた。祥衛は愛撫を阻止しようと彼の腕を掴む。
「やめてほしい、怜くん……」
「どうして、キモチイイコト好きでしょ、キミは」
「やめ……」
 探られて、祥衛は首を横に振る。
「車はイヤだなんて、今さらぶりっ子のつもりかい。外でもドコでもくわえこむくせにさ」
「うぅッ……」
 行為の数々を思い出し、祥衛は恥じらいを表情に出す。確かに、怜とはコンビニのトイレや、ビルの屋上でもしたことがある。けれど、祥衛から誘ったのではない。怜が連れ込んで、強引に行為をはじめるのだ。
 そう、今回のように。
 祥衛の性器はつまみ出される。まだ膨らみを帯びていない肉茎を手のひらで包み込まれた。祥衛のそこは年齢にしては早く、既に皮が剥かれたもの。性虐待される度に面白がられてめくられ、定着したのだ。陰毛もろくに生えそろっていないのに、形だけが大人びた姿はどこか可笑しい。
「もう、しごくの……」

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 弄ばれる自分のものをぼんやりと眺める。刺激に心地良さを覚えながらも、祥衛はやっぱり外が気になる。
「ナニ? 他のところも愛撫して欲しいの」
「ちが……う」
「まったく。いやらしい男の子だ」
 くすくすと微笑って、怜は祥衛のジャージをたくし上げた。街灯の薄明かりに照らされるのは新しい自傷痕である。
「あーあ、また、したんだね」
「……!」
 腹部の傷をなぞられて、痛みが走った。怜は笑んだ表情のままでそこに口づけ、傷を唾液で濡らしてゆく。
 怜には奇妙な居心地の良さを感じている祥衛だが、それは[何も咎められない]という点が一番の要因なのかも知れない。おのれを傷つけても、睡眠薬をがぶ飲みしても、シンナーを吸っても、学校に行かなくても、怜はまるで興味を抱かない。話したところで、ああそうなんだ、と普通にあいづちを打つだけだ。紫帆や妹のように怒ったりしない。放っておいてくれる。
 セックスの相性が良いとか、気持ちいいから会うわけでは無い──祥衛は半ば丸め込むように、自分自身に言い聞かせた。
 金をくれる。そして、何をしても叱らない。それが理由だ。断じて快楽の虜になったわけでもないし、この男に好意なんて抱いてない!
「ッん……」
 座席を倒され、両胸の突起も弄ばれて、祥衛は思わず吐息を漏らした。女の子のように悶えてしまうのを堪えようと思うのだけれど、行為を深めていくうちに我慢出来なくなって、最後はいつものよう、派手に喘いだ。車内での行為は加速して、すぐに祥衛は射精してしまう。その後は下を脱がされ、運転席の怜に跨がった。
 犯されることに慣れているため、潤滑油を用いなくとも祥衛の後孔は男根を受け入れられる。唾液と、先走りの蜜を混ぜてその代わりとしてぬめらせ、根本までもくわえた。
「はっ、あぁあっ……」
 ギシギシと軋む座席。突き上げられ、腸壁を擦られ、祥衛は悶える。きっと外から見て車は揺れているだろう。何をしているか、丸分かりかも知れない。そう思うと恥ずかしさがこみ上げて来て、怜のシャツを掴んだ。羞恥に耐えられない。
「ほら。キミはドコでも発情出来るんだよね」
「うぅ……っ」
 怜は祥衛の唇をなぞる。恥じらいつつも快楽を得ている姿を観察して、愉しんでいる。

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「しっかりと俺を飲み込んで、まだ子供のくせにさ。淫乱だなぁ」
 淫乱。そう言われたことは幾度と無くある。母の彼氏にも、援助交際の相手にも。祥衛に自覚はないし、認めたくはない。けれど犯す男は皆祥衛のことをそう評す。
「ちがぁ……、ちが……う……」
「違わないよ祥衛。こんなエッチな子、そうはいない」
「違……!」
 眉間に皺寄せつつも、祥衛は自らも腰を振っていた。怜からの揺さぶりに合わせて意識せずとも身体が動いてしまうのだ。
「怜く、ッ、俺は……ぁ、そんな……」
 んじゃない、と言いたかった続きは奪われた。肛門と性器で繋がりながら、唇も溶け合う。喉奥まで探るようなディープキスに、祥衛は震えてしまう。舌先だけでなく、心までもとろけて──陥落してゆく。
 溢れる唾液。同時に、祥衛のペニスからも新たな蜜が滲んだ。挿入されてからは触られてもいないのに、その肉棒は勃起を維持している。
 快感を感じていても、尻穴に挿れられれば萎えてしまう受けも多い。形を保てるということが現すのは、紛れもなく祥衛の淫性だ。
「ひっ。あぁあッ、あぁ……」
 糸を引く口を離されて、同時に激しく突き動かされる。祥衛は泣きそうに表情を歪めていた。前立腺を抉られて、狂いそうになる。刺激はとてつもなく強烈で、おかしくなりそうだった。
「だめ……」
 さらに先走りを吹き出しながら、漏れるのはそんな台詞。言っていて、何がだめなのか祥衛自身もよくわからない。
「もう、だめ、怜、くん……ッ」
「ふふふ、カワイイな。またイクの? さっきは俺にしごかれて、今度はお尻犯されて出しちゃうんだ?」
「ふぅ、うぅ、そ、う……」
「何度でもイケるもんね。淫乱ヤスエは」
 穿ちながら、怜は祥衛の顎を掴んでいる。祥衛は間近で怜を見つめ返した。瞳はどこまでも冷たい光を帯びている。怜はいつも柔和な笑みをたたえているが、口許だけだ。目つきは氷のようで、影を含む。その点からも、まともな人生を送っている者とは思えない。
 けれどべつに、祥衛にとってそんなことはどうでもいい。行為の代償に金をくれる、その事実があればどんな素性の者でもいい。正体など、関係ない。
「イ、クぅ、イキそう、出、そう……!」
「良いよ。漏らしちゃえば」
「はッあぁ……!」
 ぎゅっと握りしめられ、祥衛は天井を向いた。吐き出す白濁は刹那の衝撃。高みに昇り詰めて怜の手のひらで弾ける。
 訪れる恍惚は至福のひと時だ。深呼吸を繰り返しながらも、眠気に誘われる。
 だが、まどろみは長く続かない。怜は分泌された少年の精液を舐めとって、再び抜き差しを再開した。戻される激しい行為。それは深淵から引きずり出される感覚。祥衛はもう一度あえぎ、快楽に蝕まれる。次の絶頂は怜とともに昇る。