何故飛び降りれないんだろう。
どうして生きてしまうんだろう。

第一章 苦界の渦

祥衛は猫に向かって蹴る素振りをした。
そうすると猫は驚いて逃げる。

第二章 夜光虫

昼下がりの駅前を放浪し、
棲み家を忘れた魚の様に彷徨う。

第三章 存在理由

飛沫が跳ねて、罵りまみれのランドセルが
飲み込まれてゆく。

第四章 喪失

愛すべきものの為に死ぬのは美談かもしれないが、
憎いもののために血を流すなんて愚かだよね。

第五章 逃避行

二度と現実に帰れなくても構わないから、
俺を廃人にして──!

第六章 壊れた人形

生まれてこのかた、
俺は不幸しか味わったことがないんだ。

第七章 耽溺の底

俺だって虐待されてたよ。
でも俺は自分のこと不幸だなんて絶対思わない。

第八章 少年男娼

祥衛は少しだけ微笑う。
それから、フェンスから背を離した。

第九章 羽根