耽溺の底

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 猥褻な行為に溺れつづけ、合間に眠り、与えられる餌を貪る。そんなふうにして過ぎゆく軟禁の日々。
 この毎日は祥衛にとって、初めて味わう安楽な時間だった。苦痛に立ち向かうことも、物事を考えることさえも放棄して、ただただ怠惰に堕落する……もう、此処に来てどれくらい経っているのかも分からない。カレンダーも時計すらも、祥衛は見ていなかった。
 日付も分からない寝室、今はベッドの上でうとうとと浅い眠りに漂っている。
 今日は昼前から、怜は仕事に出かけていた。暇な祥衛は『独り遊び』に疲れ果て、夢に落ちる処。
 眠りの淵で、物音を聴いた。遠くのほうで玄関が開いたのが分かる。怜くんが帰って来たんだ、と祥衛は思った。思って、寝返りをうつとまた微睡(まどろ)みに抱かれる。心なしか足音が複数聞こえたのと、話し声がしたような気もした。笑い声も……怜と話すその声はどこかで聞いたことのあるような、声……
 気になりつつもシーツの引力に吸い込まれ、祥衛は意識を落とした。沈んでゆく中、夢を見る。教室の夢。少し前のあの日のこと。紫帆にうるさく言われて、しぶしぶ登校した時。何だか、ずいぶん昔のことのような気がした。まだきっと、ひと月ほどしか経っていないのに。
 大貴という少年に会った。第一印象は、まるで俺とは正反対。幸せそうな雰囲気をして……いや、きっと幸せなんだろう。そうに決まってる。他のクラスメイトと同じように、何の苦労もせずに、ふつうの家庭で育って、虐待されることもなくて、毎日のうのうと暮らしてるんだろう……そうじゃなきゃ、あんなふうに明るくふるまえない。コンビニで会ったときも、いやにニコニコして。オールの帰り? のんきなもんだ……
 いいな。うらやましいな。
 そう思ったとき夢が途切れてゆく。夜道で携帯番号を尋ねてきた、笑顔の少年の姿が歪んで、消えてゆく。どうせあの少年は……祥衛は表情を歪める。──シンドウダイキはいやなことなんて何も味わってないんだ。だから笑えるんだ。楽しく暮らしてるんだ、幸せなんだ。悲しいことも、苦しいことも、何にも知らずに生きてるんだ!!
(!)
 激しく嫉妬した瞬間、覚醒する。鼓膜に響く声は、確かに聞いたことのある声色だ。閉じている寝室の扉の向こうから、漏れてくる談笑。
 祥衛はおのれを疑った。まだ、夢を見ているんじゃないかと。けれど聞こえる音に意識を集中させればさせるほど、確信して驚く。
(まさか……)
 そんなはずはない。この声と、此処で出会うはずがない。祥衛は裸身を起こし、注意深く聞き取ろうと努めてみた。ベッドを降りてドアに近づき、聞耳をたてる。

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「えー、怜さんまた拾ったの?」
「可愛いよ。歳は大貴くんと同い年じゃないかな?」 
 大貴。
 その単語を聞き取ったとき、祥衛はビクリと震えた。頭が真っ白になる。
 どうして。どうして此処に?
 状況を理解できぬまま、祥衛はさらに会話を聞き取ろうとしながらも焦った。困惑する祥衛に響いてくるのは、やはり聞き覚えのある少年の声。怜の口から紡がれる『大貴』という名前も、何度も伝わってくる。
(うそだ…………!)
 何故、この部屋にアイツが!
 まだ夢をみているのだろうか。祥衛は状況を受け入れられず、後ずさりをした。わけがわからない……
「会ってみればいいじゃない。きっと今、眠っているんだと思うけど」
 話し声が近づいてくる。廊下を踏む足音も、軋んで届いた。祥衛は戦慄を感じ、どうしていいのかわからなくなる。逃げたい、けれど逃げ場がない。とっさにベッドに倒れ込み、毛布を被った。そうしていると部屋のドアが──開いてしまう。
「ああ、やっぱり寝てる」
 怜の声がダイレクトに、すぐそばに聞こえる。祥衛の心臓は張り裂けそうに音を速めた。
「じゃあいーよ、べつに。俺、書類渡したからー、帰るぜ」
「えーっ……もう帰っちゃうのかい、大貴クン」
「当たり前じゃん! 明日、がっこーあるし」
 怜は大貴の腕を掴んだ。動作は衣擦れとなって祥衛にも聞こえる。
「あれ、今夏休みなんじゃないの?」
「出校日だって。ちょ……っ……」
 途切れる会話。口づけを交わしているのが、細かな音と雰囲気で分かる。祥衛は緊迫の中でさらに戸惑う。
 どうしてこの二人が? いったい、どういう関係なのだろう? 大貴はもしかして、最近までの自分のように、怜と寝て小遣いを貰っているのか?
(まさか……シンドウダイキが)
 そんなことをしているなんて。……信じられない。
 毛布に篭った祥衛の脳裏に、大貴の笑顔が思い浮かぶ。教室の陽光の中で、コンビニの中で、彼は明るく接してきた。元気な少年、その姿は援助交際はおろか、性的なことは無縁そうである。

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 学校にいる、他のやつらと同じように、普通に、呑気に、暮らしているんじゃないのか──? 祥衛の頭には困惑しか湧いてこない。
「ん……、さわんな、よおっ」
「アレ? 少し反応してないかい?」
 怜は大貴をいたぶっているらしい。様子を布団の中で想像し、祥衛はどきどきと昂った。
「れ、れーさんが上手いから……」
「嬉しいなぁ。百戦錬磨の大貴くんに、褒めてもらえるなんてね」
 百戦錬磨。それは、どういうことなのか?二人の交わしている言葉は、祥衛には分からないものだらけだ。
 さっき大貴は書類がどうとかも言っていた。大貴は一体どうして怜に書類を渡すんだろう。そもそも何の書類なのか?
 ──シンドウダイキだけじゃない。怜くんも、実は、どんな人なんだろう。
 今まで、怜に関する細かなことは知ろうともしなかったし、気にならなかった。彼が何の仕事をしているのかも全く興味がなく、尋ねたこともない。
 ただ、快感を与えてくれれば、それで良かった。導いてくれさえすれば良かったから、怜が何者であろうと関係なかった。
 けれど今唐突に『知りたくなる』──深まる疑問、疑惑。汗ばむ毛布の中で、祥衛は眉間に皴を寄せた。そのうちに大貴の喘ぎが聞こえてくる。乱れる吐息も伝わってくる……
「あッ、ふ……だめ、俺、帰るっ……」
「こんな状態で? 勃起して、カチカチに固くなってるじゃない」
「イヤ…だ……っ、あっ、はぁ、しごいちゃ、やだ……!」  
「じゃ、舐めてあげようか」
 大貴の吐息は悩ましさを増す。怜は大貴にフェラチオをしている。祥衛はこの状況にますます混乱する。……これは本当に現実なのか? 夢を、見ているんじゃないのか?

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「あッ、あぁ、ふッ、あぁ……もっ、まじ、やめ……」
「なんだか、ローションの味がするなぁ。大貴くん」
「だ、だってさっき……仕事おわったばっかりで、フロ、入ってねーし……」
「ふぅん。どうりで男臭いわけだ。セイエキの匂いがするよ、体中から」
「……!」
 大貴は黙ってしまった。怜はクスクスと笑っている。
「ははは。キミは未だに素人っぽいんだよね。こんなこと言われただけで、むっとして。性玩具のクセにさ」
 性玩具。祥衛はその言葉に、耳を疑う。 
 ……性玩具って何だ?? シンドウダイキが、精液のにおいだとか、ローションだとか──『仕事』って? ……
「う、うるせーな。スキで、こんな身体にされたんじゃねーもん。つーかこんなところで……してたら、怜さんの拾ってきたヤツ、起きちまう」
「べつに起きたっていいさ。その時は3Pすればいいじゃない」
「やだよ! なんで、はじめて会うヤツと、そんなこと……」
「ホントはもう起きてるかもよ。寝たフリしてるだけだったりして」
 怜の言葉はさらに祥衛を混乱させ、追いつめた。一気に高まる緊張。此処にいることが大貴にばれたら、どうなるんだろう……大貴は何と言うだろう。どんな表情で自分を見るんだろう。
「ねぇ、祥衛。もう目が覚めてるんでしょ?」
「!! え、れーさん……!」
 怜の呼びかけに、大貴は驚いた。絨毯の上に押し倒されていた身体を起こす。
「いま……なんてゆった……」
「ん? どうしたんだい?」
「そいつの、名前」
 祥衛。怜がそう答えた瞬間、大貴は衣服を乱したままで立ち上がった。ベッドに駆け寄り毛布を剥がす!
「祥衛!!」
 少年達の視線は交わった。……祥衛の頭はまっ白になる。薄暗い部屋の中、布団を暴く大貴の顔は驚愕に染まっていた。
「おまえ! なんで、こんな所に!!」
 横たわる祥衛は何も返せない。微動だにもできなかった。逃げ出していた日常の世界が一気に流れ込んでくるような感覚が迸る。

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「えっ、大貴くん、知り合い?」
 さすがの怜も多少は驚いたらしい。瞳を見開き、少年達を見た。
「知り合いっつーか、おんなじクラスだよ! おい、祥衛、帰るぞ! 起きろよ!!」
 腕を掴まれ、強引に起き上がらされる。しかし祥衛は大貴の手を振り払った。
「………い、いやだ……」
 帰りたくない。戻りたくない。この部屋から出たくない。向き合いたくない、現実と。イヤなことで溢れているから。辛いことしか、其処にはないから。
 生きるのが億劫(おっくう)で、それなのに自殺することもできなくて、自分の弱さと無力さと存在理由の無さに脅えながら暮していかないといけないから、帰りたくない!
「沢上が、すっげー心配してるんだぞ。泣いてんだぞ! 学校も休んでんだ、あいつが……お前がいないから!」
 どれ位ぶりに聞いただろう、紫帆の名前を。祥衛は耳を塞ぎ、表情を歪める。思いがけず聞かされる、遮断していた世界の現状。
「なんでれーさんの所にいるんだよ、ヤスエが!」
「……それは、シンドウだってそうだ……」
 祥衛は頭を抱え、俯いたままで声を絞り出した。
「シンドウだって、売春……してるんだ。怜くんに、金、もらって……」
「はぁ? 俺はれーさんとそんな関係じゃ」
「全部……聞いてたんだ、キスしてた。いやらしいことも……してた、くせに……」
 部屋の中は無言になる。大貴がたじろいだのが分かって、祥衛は顔を上げた。
「変態、だ。男とそんなことして。学校とか、外ではふつうのヤツっぽく、演じてるだけで。……変態なんだ……!」
 大貴は複雑な表情をしていた。驚きとも、悲しみとも、怒りとも取れない顔。眉間に皴を寄せ、唇を震わせている。
「そんなシンドウに……どうこう、言われたくない。俺は外に出たくない、もう二度と、戻りたく」
 紡ぐ祥衛の言葉は途切れる。大貴に頬を殴られたのだ。

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 衝撃に、祥衛の肢体はシーツに倒れる。瞳に映ったのは、握りしめられた拳。
「大貴くん、ダメだよ──」
 怜は大貴を押さえた。祥衛は何が起こったのかよくわからないまま、痛みを感じている。
「ばかやろう! 俺は、俺はっ……ヤスエなんか一生ここにいろ! 最後は売られて、ずたずたにされればいぃんだ!!」 
 声を荒げてそう言うと、大貴は怜を突き放し寝室を去る。怜はそんな大貴を追いかけていった。
 



 祥衛は一人、寝室に残される。  
 



 祥衛はベッドの上で膝を抱え、直面した現実に困惑し続けていた。わからない──なにひとつ。彼らが始めようとしていた情事や、毛布越しに感じていた妖しい余韻を消せない。薄闇のベッドで脈拍は乱れ、体中にじっとりと汗をかいていた。何が何だか分からないまま、そっと痛む頬に指を這わすと、熱を持っている。 
 大貴から知らされた紫帆の現状が祥衛の心を揺らす。せっかく逃げていたのに、耳を塞いでいたのに、目を閉ざしていたのに……全てが瓦解した。止まっていた時間が一気に押し寄せてきたかのような感覚さえ味わっている、今。
 祥衛は表情を歪め、己の肩を抱いた。何故だか知らないけれど、身体が震える。脳裏に浮かぶのは紫帆の悲しそうな顔。涙伝う頬までもリアルに過る。
 彼女にそんな思いをさせているのは他でもない、自分自身なのに。
(どうして紫帆は心配するんだろう? いつもいつも、いつもいつも……俺がどうなろうと、紫帆には関係ないのに。俺に関わらないほうがいい、俺と関わると、ろくなことがない。今だってそうだ、俺を思って泣いてるんだから。俺のことなんて考えなくていいのに!)
 紫帆のためにも、俺は紫帆の前から姿を消したほうがいい。祥衛はそう確信している。

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 紫帆のことが好きだから。だからこそ、紫帆にこれ以上迷惑をかけたくない。紫帆と縁を切るほうが、紫帆にとっても良いはず。
 ちょうどいいタイミングだ、沖縄に行ったら、俺のことはもう記憶から消し去ってほしい。早く彼氏とか、作ればいい。そうしたらもう俺のことなんてどうでもよくなる、きっと。
 ……決して、嫌いだからこんな風に考えるんじゃない。紫帆のことを大切に感じるからこそ、こんな俺のことは捨ててほしく思う!!
 思考を廻していると、憂鬱が襲いかかってきた。胸が痛い。殴られるのとは違う、心の中が抉られるような不思議な痛み。目の奥も焦げたように熱くなってきて、まるであの日のように──自殺場所を探していて、怜に拾われたときのように──涙腺が滲むのが分かった。
 辛い。
 本当は紫帆と離れたくない。
 紫帆の顔が見たい。
 紫帆と話したい。
 紫帆に触れたい。
(だめだ、だめだ、だめだ……!)
 祥衛は頭を振る。忘れなくてはだめだ。紫帆のことが本当に好きなら、紫帆を捨てなければ!
(だって、俺は良いところなんて一つもない。生まれてきたのが間違いみたいな……ゴミクズ以下の存在……)
 そんなヤツが紫帆と一緒に居ていいはずがない。
 現に、これまでも紫帆を散々困らせたり、悲しませてきた。そして今も彼女を泣かせている。
 ──自分から逃げ出しておいて、思い出したら恋しくなって。祥衛は己を鼻で笑った。こんな風な自分なんて早く壊れてほしい。もっと変態なことばかりして頭がおかしくなればいい。そうすればきっと、紫帆の存在を記憶から消せる。
 紫帆のために、紫帆に惹かれているこの気持ちは殺すべきだ。紫帆とは二度と会わないほうがいい。怜くんに頼んで、檻とかに閉じこめてもらおう。痛みでもキモチイイことでも何でもいいから、与え続けてほしい。紫帆を想う心ごと抹消されたい。
 祥衛は唾を飲み込んだ。大貴に殴られたときに口の中を噛んでしまったらしく、血の味がする。舌先で転がして、それから静かに窓に向いた。夜景を、遠い下界を見下ろす面持ちで眺める。そうだ、もう俺は捨てたんだ。現実なんて、捨てたんだ、此処で廃人になるんだ──

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 流星群のような車のライトの羅列を目で追っていると、遠くで響くドアの開く音がする。足音はひとつ。怜だけが戻ってきたのだった。
 寝室に戻ってきた怜は、大貴を車で送ってきたのだと話した。その口調はさばさばとしたいつもの怜だが、雰囲気が微かにおかしい。祥衛はその微妙な変化を感じ取り、怪訝に思う。
 すると怜は「残念だよ」と呟いた。
「……キミには何もないと思っていたけど、まだ“ある”んだもの。昔の俺と似ている気がしていたけど、違ったんだね」
「え……」
 薄闇に覆われた怜の顔は、どことなく寂しそうだ。
「がっかりだ。祥衛には帰る場所があるんじゃないか。単にキミが、勝手に拒絶していただけでさ」
「何……言って…」
「友達なんでしょ、大貴くんは」
 問い掛けに、祥衛は首を横に振る。そんなことはない。出会ったばかりだし、彼のことは何も知らない。
「……ちがう、話したことも、ほとんどなくて……」
「でもキミを連れ帰ろうとしていた。大貴くんはキミがココで堕ちるのを望んでない。それにさ、祥衛が消えて、泣いている子までいるらしいね?」
 祥衛は返答に詰まる。また、紫帆の悲しそうな横顔が脳裏に浮かんだ。寝室を沈黙で満たし、何も言えずにいると、怜が零したのはため息。
「俺はキミで遊んで、最後は売るつもりだったんだ。闇世界のオークションでね。でも、大貴くんのお友達と知って、そんなことをするわけにいかない」
 闇世界。台詞には祥衛の知らない単語が含まれている。話しながら怜はクローゼットを開け、衣服をベッドに投げつけてきた。それは、祥衛が此処に来た時に着ていたものだ。
「夜が明けたら、出ていきなよ」
 突然の宣告。祥衛は驚き、目を見開く。
「なっ……」
 行くところなんてない、その事実は怜にも伝わっているはず。なのに、何故そんなことを言うんだろう。戸惑う祥衛に怜は言い捨てる。
「甘えるな」
 そして祥衛に背を向け、怜は再び部屋を出ていく。
「心配してくれるコが一人でもいたら、帰るべきだ。恵まれてるよ、キミは」

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「そんなこと……」
 俺のどこが恵まれてる? 毎日殴られていじめられて、犯られたりもして。食べるものも貰えないから、万引きするしかなくて……いつもおなかがすいて。友達なんていないし、親は性格悪いし……生まれてこのかた、俺は不幸しか味わったことがないんだ。
「恵まれてなんかない、俺は絶対に」
 祥衛は声を張り上げた。しかし怜には届かない。扉が閉まる音が響き、また祥衛は独りになった。
(何だ……結局怜くんも、他の人と同じだったんだ)
 俺の辛さを分かってくれないし、こうやって捨てる。クラスメイトにも、教師にも母の彼氏にも、最後は必ず裏切りを与えられてきたけれど。
(怜くんのことは少し、信じてたのに。結局、こうなるんだ……)
 怜に居心地の良さを感じていた自分自身が馬鹿馬鹿しく思える。人間なんて全て同じ。俺を嘲笑う存在でしかない。紫帆だけが違う、それが際立って浮かび上がるけれど──祥衛は俯き、膝を抱えた。
 そんな紫帆を捨てるのか、俺は。
 でもそれは紫帆のためだ、こんな俺と居たらいけないから、離れるのは良い機会、良い機会なんだ。己に言い聞かせる祥衛は寝室の片隅で闇を睨む。