▽ 帰 還 篇

だから……もう俺がいなくても……
深く憂いながら、楓は瞼を閉じた。

第一章 静想

──遊郭を出てからだれにも
甘えることなんてできなかった。

第二章 別れ道

舌先は楓の睫毛を舐める。
涙のように唾液は頬を伝ってこぼれた。

第三章 麝香

生まれてきてくれてありがとう。
俺は一度も後悔したことはないんだ。

第四章 御燈

遊郭はいい。
やっぱり好きだな。この場所が……

第五章 朧月夜


懐かしい、古めかしい木造の門。
あの門は全てを知っている。

第六章 帰陰

此処は非現実的な場所……
現代の倫理観や常識からは取り残された世界。

第七章 堕つ百合


艷やかに伸びた黒髪。大きな瞳が瞬く。
虹彩は両眼ともに琥珀色をしていた。

第八章 酔芙蓉

楓は両目に焼きつける、圧倒的な情景を。
幻想的な星の雨は長く続いた。

第九章 星の雨


いつもは可愛い美砂子が時折覗かせる
毅然とした一面は、出逢ったときと変わらない。

第十章 まほろば